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掌の神様*
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その部屋には何もない
真っ白い一面の壁
真っ白いタイルの床
そして小さな窓が1つ
少年はその小さな窓の縁に頬杖をついて、毎日毎日そこから見える小さな世界を眺めていた
前髪が伸びて目を覆うのも気にしない
窓枠から小さく見える四角の世界、それが彼の世界
そこから見える一本の木が綺麗な緑の葉を蓄え、花を咲かせ、散って......そしてまた新しい葉をつける
それらをただひたすらぼんやり眺めているのだ
ある日、窓のそばに小さな小鳥が飛んできた
窓を隔てた外から微かにキィキィと鳴き声が聞こえる
少年は指でトントンと窓を叩くとそれに反応して小鳥が窓をくちばしで叩いた
少年はその反応がうれしくて、何度も叩いて小鳥の返事を待った
少年はその小鳥をもっと見たくて窓に顔をべったりつけて、食い入るように見つめる
窓に頬の跡がついても気にしない
できるだけもっと近くで見てみたい
だけど少年はその小鳥を「鳥」という生き物だとしらない
かわいいという単語も知らない
嬉しいという感情をあらわす単語も分からない
知っているのは
好き
嫌い
痛い
怖い
教えられたのはこの4つのフレーズ
だけど、少年は言葉を紡ぐ事ができない
聞いて認識するだけ
だけど肯定していいのは好きという言葉だけ
他の3つの肯定は許されていない
薄い布地の裾の長いシャツを一枚だけ羽織った姿に赤い首輪
少年はこの姿で一日中この部屋に1人きり
彼が来るのを待っている
窓に食い入るようにへばりついた少年は部屋の鍵が開いて彼が入ってくるのを気付かなかった
「ユウ...?」
彼は少年の事を”ユウ”と呼んだ
ユウと呼ばれて少年は振り返り驚くのと同時に駆け出して立たずむ彼に飛びついた
頭を彼の胸に擦り付けて全身で来てくれたことを喜び、飛び跳ねる
彼は少年を抱きしめて、頭を撫で、髪にキスをして少年の名前を何度も囁いた
少年は自分の名前を最近ようやく認識できるようになり、呼ばれるたびにまるで尻尾をふるようにまとわりつく
今日もまた、彼に呼ばれて少年は無邪気な笑顔を向けた
彼はその笑顔に答えるように微笑みながら少年の首輪を人差し指でグッと強く引き寄せて言った
「何見てたの?」
いきなり首輪をひっぱられてついてる金具が喉に食い込む
「がっ...かはっ...」
喉につかえて一瞬息が止まりそうになる
咳こむ少年の髪の毛をつかんでそのまま窓の方に引きずっていく
「あっ...あっ...」
言葉を持たない少年は痛みに顔を引きつらせ小さく悲鳴をあげる
窓に少年の顔を力任せに押し付けるとガラスがミシッと小さく軋む音がした
窓の全体に顔を押し付けながら彼も外を眺めてみると、窓の向こう側に木の実をついばむ小鳥が見えた
「なーんだ...小鳥かぁ...」
その声に感情はなかった
「ねぇ、ユウ??鳥見てたの?鳥?」
頭を押さえる手に力を込めながら何度も少年に問いてみる
でも少年は否定も肯定もできない
なぜならばその答えを話す術を持たないからだ
押し付けた唇の端からよだれが垂れて窓ガラスを汚していく
顔の骨が押し付けられてゴリッとなるのが腕に伝わってくる
「うぁ......」
少年は恐怖のあまりにすすり泣きのような声を上げた
「ユウ?泣くの??何で?」
彼は驚いて、頭を抑える手を離した
少年の瞳からポロポロと涙がこぼれ、押し付けられて赤くなった頬を伝う
彼は少年を抱え上げて質問をする
「あの小鳥みてたの?」
少年は答えられない
「かわいかった?」
何を言っているのか理解できない
「あれが好き?」
好きは肯定する言葉
少年はコクリとうなづいた
「あはは...そうなんだ?ユウは小鳥が好きなんだね」
彼はそう言って少年のほっぺたをギュウっと力いっぱい抓る
ビクッとして頬の痛みに身体を強張らせる
「痛い?」
それは肯定してはいけない言葉
痛いのに痛くないと言わないと許されない
首を必死に横に振り、痛くないと態度で示す
「じゃぁ怖い??」
ブルブルと横に振る
少年はこの流れの後の行為を察知して青くなる
ガタガタと震え、奥歯がカチカチと鳴り出した
少年は抱えられた体をバタつかせ飛び降りた
何もない部屋で隠れようもないのに、部屋の隅に駆けていく
部屋の隅で自分の体を守るように小さく丸く縮こまって震える少年を彼は遠くから蔑むように眺め、1つため息をつくと、一歩一歩、革靴の音がわざと鳴るように近づいた
自分の身体を必死に抱えてガタガタと震える少年のすぐ近くまで歩み寄り、勢いよくその革靴で蹴り上げた
小さくて軽い少年は一気に飛ばされて倒れこむ
倒れたところを髪の毛を掴んで部屋の中央まで引きずる
「あーーーーー!」
甲高い奇声をあげて泣き叫ぶ少年に彼は容赦なく拳を振り下ろした
骨がぶつかる音が部屋に響きわたり、お腹の奥から絞り出すようなうめき声が聞こえる
シャツが捲れ、何もつけていない肌が露わになると、おそらく今ついた傷よりも前であろう、傷と痣が無数にみえた
素肌の太ももの内側を革靴の踵で執拗に踏みつけると、声にならない悲鳴を漏らす
どうにかして殴られないように、両手で顔を覆うその姿を見ると一層、傷つけてやりたくなる
ひたすら殴りつづけると自分の手からなのか少年のなのか分からない血が点々と飛んだ
気がすむまで殴り、欲望を満たす
気がついた時には少年は泡を吹くようにぐったりとし、手を大の字に広げて伸びていた
肩で息をしながらそれを見下ろし彼は少年を呼ぶ
「ユウ...?おきて?...ユウってば...」
ぐったりとしたまま反応がない少年を真下に、彼はおもむろに胸ポケットからタバコを取り出し、
咥えながら火をつけて、落ち着かせるように一息ついた
ユラリと煙を吐き出しながら考える仕草をして、そのまま指に挟んだタバコを彼の掌に押し付けて火を消した
ジュッと肉の焼ける匂いと激しい痛みに少年は飛び起きた
「あぁ、よかった!ユウ!おきて?」
額から血が流れ、唇の端が切れて青紫色に腫れ上がる
楽しむように笑う彼の顔を見て、少年はこの後に何をされるのか理解する
いつしか彼の足の間から水溜りが広がっていた
「あーぁ、、、粗相しちゃったねぇ?」
呆れたように、笑うと彼は少年の頬を舐めあげて耳たぶを噛んだ
「!」
痛みに眉を潜めながら懇願するように少年は彼にしがみつく
それを受け入れるように彼は少年を抱きしめて自分の膝に乗せた
「ユウ、、、俺以外好きって言っちゃダメじゃん?」
意味はわからなかったが、好きの言葉が入っているからうなづいた
「俺が好きでしょ?」
首を必死に縦にふる
「俺が怖い...?」
怖いは首を横に振る
すると彼は満足したように少年の唇を舐め、切れた口の端の傷を愛しいように味わった
だらしなく開いた口の中に自分の舌を無理やり押し込んで、乱暴に搔き回す
息ができなくて仰け反る少年の頭を押さえつけて、さらに息ができないように深く舌を入れていく
唾液の糸を引きながら舌を引き抜くと少年は彼の腕の中でとろみのある瞳を向けた
少年は分かっていた
彼がこれを始めたらもう殴られないということを
許されてこの後はまるで別人のように優しくしてもらえるということを...
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