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椿は降り注ぐ熱と光に額を拭った。
暑い、暑すぎる。
涼しい店内から一転。
後ろでは無情にも自動ドアがしまっていく。
ありがたいことに入口に伸びている屋根の下に身を納めて溜息を吐いた。
先が思いやられる。
暑すぎるだろ、なに、夏ってこんなに暑かったっけ。
ちょっと前まで梅雨って言ってなかった?
あわよくば雨でも降らないだろうか。
傘持ってないけど。
淡い期待を抱きながらどんな空だと見上げて後悔した。
澄み渡る青い空と、目を晦ます太陽。
雨は降りそうにない。
じっとりと吹き出てくる汗を感じながら目の前を見てみれば、ジリジリと音がしそうなぐらいアスファルトが焦げていた。
綺麗な蜃気楼だ。
正直ウンザリする。
心の中で悪態を吐いてみても、結局相手は自然。
向けどころの無い苛立ちは消えるわけがなかった。
体感だけでなく視覚からも暑さを感じながら、椿は意をけして影から飛び出した。
日向は日影に比べて3度、いや、それ以上。
暑い気がする。
足を進めながら周りを見れば涼しげに歩く女の人。
暑そうにしているサラリーマン。
椿は辺りを見回しながら、どうにか暑さを紛らわそうと「暑くない、すっごく涼しい」と頭の中で唱えた。
案外単純な脳みそだ。
心無しか涼しくなった気がした。
授業までに学校に戻らなきゃいけない。
椿は反射して見えにくい時計を覗き込んだ。
時計が指すのは授業開始時刻10分前。
ここから学校までは少なく見積もって7分。
余裕を持って見積もれば10分。
間に合わないかもしれない。
交差点で止めていた足をふらりと進める。
「ちょっと、君!」
椿が時計から目を離して前を見た瞬間だった。
後ろから声がした。
条件反射で振り向く椿。
椿の目にはスーツの男の人が目に入った。
なにやら焦った顔……というか、ぎょっとした顔をしている。
「え?」
思わず声に出てしまった。
椿がその声を上げるか上げないか。
瞬間彼は椿の手首を掴んで自分の方に椿を引き寄せた。
な、なに?!
ぐらりと揺れる体、次には男の人の体に自分の体が抱き留められる感触。
動揺、しかない。
状況が全く理解出来ない椿は口をぱくぱくと開閉させた。
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