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「危なかった……大丈夫かい?」
スーツから香る柔軟剤の匂いが鼻腔を刺激する。
すん、と思わず音を立ててもう一度匂う。
柔軟剤の匂いとは別に香るなんだか芳しい匂い。
好きな匂いだ、と思った。
感じたことのないいい匂い。
ずっと嗅いでいたいと思う匂い。
それから、頬に当たる胸板。
鼓動こそ感じないけれど、スーツ越しにも感じる肉厚な筋肉。
とくっと心臓が音を立てた。
あ、好き。
「あ……っ、の」
「君、前はきちんと見て歩こうね。信号、赤だったよ?」
どく、どく、どく。
自分の耳にも聞こえるほどの大きな音を、心臓が立て始めた。
ただでさえ暑いというのにさらに体温が上がる。
頬が熱くなって来るのを感じる。
するりと腕が開放されて、男は椿の体を優しく自由へと促した。
椿はというと、ぼうっとした顔で二、三歩ふらふらと足を動かして、体制を立て直した。
さっきはよく見えなかった顔を見ようと、男の胸板にあった視線を上へとあげる。
スーツ越しにもわかる整った胸板。
筋の通った首筋……。
形のいい唇。
「大丈夫?びっくりしてる?」
まるでマシュマロのような柔らかさの声は、椿の耳にふわりと当たると泡のように柔らかく鼓膜を刺激した。
少し困ったように微笑む男の顔。
あぁ……すっごくかっこいい……。
これが目がハートになるってやつか。
俺今絶対目、ハートになってるよ。
胸を掻きむしりたくなる衝動。
椿はぼう、と目の前の男を見つめた。
「あのぉ」
「ん?」
「好きです……。」
目の前の男の優しく開かれていた目が、大きく見開かれるのを見て、椿の胸はまた高なった。
本能のままに動く体。
そんな体とは裏腹にその様子を見て言ってしまったと頭では思ったけれど、理性も危うい。
思考はもう頭の隅でしかされていなくなっている。
もう、恥ずかしがるなんて気持ちはどこかに忘れてしまったようだった。
「え?」
「あの、好きです。一目惚れしました……すっごく好きです。」
男の顔を見ながらもう一度口にする。
全身に鳥肌が立って、暑さすら忘れていた。
椿の体には、彼が生きてきた中で感じたことのない快感が駆け巡っていた。
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