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男ひとりでカフェに入るなんてことは無い。
ましてや彼女なんてできたこともないから、カップルでカフェなんてこともない。
初めて入るおしゃれなカフェに、椿は目を回した。
「なにか飲みながら話しよう。頭も冷めるかも。」
「だから別に俺は……」
「はは、何のむ?」
「えっと……」
上に書いてあるメニューらしきものを見ても文字がちっさいし何が書いてあるのかわからない。
てか、多すぎだ!俺がこういう場所に慣れてないのがバレる!
恥ずかしい!
あぁもう。悩んでも同じかもしれない。
どうしよう、とドツボにはまりかけた時俺はいつもコンビニでミルクティーを買うのを思い出した。
「ミルクティーで」
「うん、じゃあ……このアールグレイティーのトールと、アメリカンコーヒーのトール。」
スマートに注文するなぁ……。
かっこいい。
さっきからかっこいいしか言ってない気がする。
椿は鞄を漁って財布を取り出す。
そこで「あっ」と声を出した。
「どうした?」
さっき食べた昼飯で財布の中がカツカツになっていたのを忘れていた。
所持金28円。
学校終わった後にでもお金を下ろせばいいや、とか思っていたのを思い出す。
店員さんも彼も椿を見て動きを止めている。
男の手にはとてもスマートな財布。
革だろうか、何の革?
いやいやそんな事はどうでもいい。
「あの、アイスティー……いいです。俺、今持ち合わせなくて」
「そんなの気にしないでよ。じゃあ、うん、それでお願いします。」
申し訳なさそうに手を振る椿に、男は破顔すると店員に向き直った。
そして千円札を取り出すと、お釣りを受け取った。
椿がごちそうさまですと小さく声を出すと、軽快な「いえいえ」という声が返ってきた。
「それにしても、財布持ってるのに持ち合わせないってどうして?」
「え……あぁ、さっきお昼ご飯食べた時にぎりぎりで……」
「はは、そっか。はい、ミルクティー」
出来上がったコールドドリンクを受け取った男が椿に手渡す。
男は同じくもう一つのカップを受け取ると、店内を見渡した。
茶色液体に乗せられたミルク。
もしかして俺すごくこの人の目にダメな男として映ってるんじゃないか……?
え、俺情けない。
会ってからかっこよくて、完璧な姿しか見せない男。
せめて俺金持っとけよ!!!
心の中で叫んだ椿の声は、数分前の椿に届く事は無い。
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