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角のテーブル席。
男はソファ側に椿を座らせると、自分は椅子を引いて腰を掛けた。
「話をはじめる前にまず君の名前を聞いてもいいかな。いろいろ不便だ。ずっと君と呼ぶわけにもいかないし……。あぁ、僕は土井智(ドイ サトシ)。」
土井さん。
椿はストローから紅茶を吸って眉をしかめたくなるのを我慢した。
安物と違う紅茶の味。
なんか、茶葉の味がすごいする。
花の匂いみたいな味。
「俺は……蒼野椿です。」
「へえ、椿くん。かわいい名前だね。いくつなの?」
「19です……今年20歳になります。」
「……20……若いな。」
狼狽えたように顔を逸らす智。
その様子に椿はすかさず口を開いた。
「あ……俺、年とか全然気にしませんよ?」
手を顎に当てたまま、ちらりと椿を伺った智は顔を歪めた。
「気にしない……ね。その話だけどさ、椿くん」
「はい。」
太い手首に巻き付く高そうな時計。
それを見て椿は智とこうして話すきっかけになった理由を思い出した。
授業……もう始まったな。
頭の奥で聞き飽きたチャイムがなる音が聞こえる。
そういえば土井さんはスーツだけど、会社戻らなくていいんだろうか。
ご飯食べに外に出てたとかじゃないんだろうか。
疑問に思ったが、引き留めている理由は自分なのだから聞けない。
智はふぅ、と息を吐きながら胸を上下させると机に両肘を着いた。
「いい年しておじさん……からかわれたー、なんて酒の肴にしかならないよ?」
「え?」
「友達近くにいるんじゃない?僕今笑われてたらどうしよう」
「何の話ですか」
「ほら、君ぐらいの年だったら酔ったはずみにそういうゲームしちゃうだろ?ぶつかった相手に告白してこいとかさ」
「しませんし、したことないです。」
「あれ?しない?僕達割としたんだけどな。ジェネレーションギャップ……?おじさん落ち込んじゃうよ」
よく手が動く人だな。
海外の人かと思うぐらいによく手が動く。
どうやら彼は俺が告白したのを何かの冗談だと思っているらしい。
そんなに受け入れられないものかな。
そうか、そういうものなのかな。
たしかに俺も突然付き合ってと迫られたらびっくりして、気が動転しちゃうかも。
「友達とそんな遊びもしてないし、俺は冗談でそんなこと言いませんよ。」
「……そうか……。じゃあ熱射病とかじゃない?頭くらくらしない?」
「しないですね。あの、電話かけようとするのやめてください。」
スマホを取り出して何かを打ち込もうとする土井さん。
この人案外おちゃめなのかな、なんて思ってなんとも言えない顔を作ってしまう。
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