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メデューサに見つめられた男のようだと思ってしまった。
まるで体が石化してしまったのかと疑うほどに自由がきかない。
それなのに心臓だけは大きな音を規則正しく、通常の二倍ほどの速さで動いている。
椿の引っ込めた手のひらには、まださっきの感覚が残っている気がした。
「ふふ、ご飯飽きた?」
智の眼力が緩んで、いつもの柔らかい表情になる。
椿はその問いに大きく首を左右に振った。
「そんなことないです!」
「そう?」
「はい。まだ全然入りますし!」
残っていた1口のそばを掬って、啜った椿はもぐもぐと咀嚼をした。
口の中でどんどんと細かくなっていくそれ。
顔が熱くなるのを感じながら、椿は智からあえて視線を逸らしていた。
――ぴと。
海鮮丼を攫って、また口の中に含んだ時だった。
頬にある感触を感じて、椿の体がビクっと跳ねる。椿の頬には智の手が添えられていた。
椿は逸らしていた目線を智に戻す。
すると、智は椿をしっかりと見つめていた。
「びっくりした?」
するすると優しい手つきで撫でられる椿の頬。
ゴツゴツとした指、少し荒いその肌質になでられる感覚が気持ちよくて思わず目を細めそうになる。
問いに答えるように椿がこくりと頷く。
「だろう?僕もびっくりした。そのまま噛んでみて?」
椿は言われたとおりにやめていた咀嚼を再開する。智の大きな手が、椿の頬を覆うように添えられて、椿の口の動きがすべて智に伝わってしまう。
それがなんだかとても恥ずかしいことに思えて、椿は羞恥心を覚え始める。
「噛んで、ほぉら。しっかり噛まないとさ、消化に悪いよ?」
頬をぐいっと押されて、噛み砕いたものが中に戻ってくる。椿はさっき智の頬に触れたのを思い出して、この舌の上で感じる感触すべては智の指越しに伝わっていることを知る。
なんだかとても、恥ずかしい行為のように思えてしまって、椿は頬を上気させながら言われたとおりに咀嚼した。
飲み込んでしまおうと思った時だった。
「口を開けて」
智は椿にそう言った。
優しい口調で、命令のように。
頬にあった手は唇に移動して、指先でふにふにとなぞられる。
噛み砕いたものを見せて?
それは流石に、恥ずかしい。
排泄物を見せるような、感覚に似ている。
椿は目を細めながら顔を左右に振った。
「いいから、ほら。」
しかし智の指は両唇を押し広げた。
そして椿の唇はどんどん下へと広げられる。
あ、開いちゃう。
羞恥心はあれど、抵抗する気のない口は簡単に開いてしまう。
智はどんどんと中を見ようと、唇に置いていた指を歯にまで動かした。
「あっ……ぇあ…」
かなり口が開いた頃だろうか。
羞恥心に苛まれ、どくどくと高なっている心臓と、言い知れぬ雰囲気に飲まれた椿の目はとろんと据わっていた。
それをいいことに、智の指がぬるりと舌の上に降り立った。
動いた親指はぐりっと舌の先端に突き立てられる。軽い痛みと共に唾液がじわりと出る感覚がした。
ぐちゅりと、音を立ててから出ていった指。
椿が焦点を目の前の男に戻した時には、智は優しいあの顔で微笑んでいた。
「ごめん、可愛いから意地悪しすぎちゃった……」
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