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あの後智と別れた椿は一旦家に帰って昼寝をした。
そして、5限に出席するとそのままバイト先に向かった。
椿がバイトしているのはファミレスだ。
シフトが4時間単位で組まれているし、なにより1週間ごとに提出すれば良いという便利さから一回生の時からここで働いている。
「おはよう椿くん。」
「あ、おはようございます。店長!」
「椿くん昨日からすごく機嫌いいよね、何かあった?」
何か、いいこと。
店長が椿に話しかけた。
椿は服を着替えながらはにかむ。
そりゃ……たくさん……はないけど、あった。
椿は頭の中で返事をしながら、実際に口に出す返事を考えていた。
オメガ性の人達は、様々な危険の因子であるため、事前に店側に自身はオメガであるということを伝えなければならない。
ので、当然店長は椿がオメガであるということを知っている。
しかし、だからといって「いい人に出会えたんです!」なんて言えない。
そのことに言及されたら困るからだ。
椿は男、そして椿が恋したのも男。
オメガは孕むための性別だとしてもまだまだ同性愛者というのは生きにくい世界。
堂々と男と女のカップルみたいに外で手をつないで歩くのは難しいと言える。
かくいう椿も、べつにゲイではない。
ないはずなのだ。
前の恋人も、今の思い人も男であるので、説得力はない。
加えて言えば童貞だ。
どうしてもオメガは発情期を伴う。
その際、突っ込みたいという欲求より突っ込まれたいという欲求が勝ってしまう。
元彼の裕人と体の関係……否、恋人になっていたのも本能には抗えなかったからだ。
(何度もいうが、別に後悔はしていない)
仲の良い友達、裕人。
椿が発情期で苦しんでいる時に助けてくれたのが発端で、なぁなぁと関係を続けていた気がする。
体の関係はつい最近まで続いていた……というか、先月の発情期に面倒を見てもらったばかりだ。
恋人の関係が終わったのはたしか、あれ、……なぜだろう。
ただひとつはっきり言えるのは、椿は裕人を友達として好きだっただけで恋人として好きではなかったということ。
その証拠に発情期の時以外で彼とセックスしたことは無いのだ。
発情期の時、相手が誰かわからなくなるほどに熱に浮かされ必死で貪ることはあれど、愛しさを感じたことは無かった。
そんなことを考えながら、モヤモヤとする頭をかき分けていくと椿の耳に店長の声が入ってきた。
「何かいいことあったんだ?」
「ええっなんでですか?!」
「ぼーっとしてる」
「してます?!」
「してるよそれに、なんか、わかるんだよ。なんかぽやぽやしてる。」
「ぽ、ぽやぽや……そんな……っ」
智のことを思い出して顔がにやけそうになるのを堪えながら、否定した椿に店長は生温い目をした。
ここの店長は優しい。
優しい、……というのはただこうして世間話をしてくれるから、という理由だけではない。
この店長の優しさに椿は生活苦を救われた。
大抵はオメガと聞くと、面接でよく落とされてしまうのだ。
椿も、大学に入りたての頃バイト先に面接に行ってよく落とされたものだ。
それは、なにかあってはいけない、という心配。固定シフトを組めないという難儀さ。ただ単に、オメガが嫌いとか、そういう偏見。
いろんなものが絡んでくるのだが。
幸いここの職場ではそれも少ない。
少ない、というだけで、あるにはあるが……。
「まぁ、いいけど。ね、今日も頼むよ椿くん。」
「あ、はい。」
背中をポンポンと叩かれて、椿は深呼吸をした。
今日はホールだ。
短いサロンを巻いて、椿はホールに出た。
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