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バイトを終えて帰ったのはもちろん9時。
椿は大抵、お昼の3時から夜の9時の6時間の長さでシフトを入れている。
三時以降の授業がある日は別だが。
今日も授業があったため、実質三時間ほどしか働いていない。
昨日と違って疲れていない椿は、帰ってすぐお風呂に入るとそのまま部屋着を身につけベッドに横たわった。
そしてカバンの中に手を突っ込んで引っかき回すと、あるひとつのものを持って寝返りを打つ。
もちろん椿の手の中にあるのは携帯。
本当はみたくてみたくてしかたないのだが、授業が終わってから椿は1度も携帯に触れていなかった。
なぜなら、暇さえあれば智とのメッセージのやり取りを見つめてしまうからだ。
画面を見つめれば考える事はただひとつ。
なにか連絡が来ないかな。
そればかり。
正直身がもたない。
見ていれば否応なしに考えてしまう、思い出してしまう。
すると椿はそわそわドキドキせずにはいられない。これは幸せなことなのだろうがとても体力を使うのだ。
その証拠に椿は昨日からすごく体の疲れを感じていた。
それに……、ずっとその画面を見ていて、もし、万が一智が椿にメッセージを送ってきたらすぐに既読という文字がついてしまう。
そんな瞬間についたら気持ち悪いだろう。
ずっと見ているのがバレてしまう。
それに……なんだか、悔しいというか情けないというか……好きすぎるというか。
いや別に、伝わって悪いものではないのだけども、かっこ悪いというか。
側面についているボタンを押し込めば、真っ黒の画面はたちまち発光し映像を映し出す。
椿はすぐに緑色のアイコンをタップした。
するとちょこちょことメッセージの受信を知らせる数字が見えた。
その中に智のものもある。
椿は喜びを覚えながら、一番に智のものをひらいた。
『お疲れ様。今日は早めに帰ることができたよ。椿くんはまだバイトかな。』
「お疲れ様です。よかったですね!バイトを終えて帰ってきました!」
もっと捻った返事ができればいいのに。
そう思うも、結局他には出てこなくて味気のないこの文を送るハメになる。
椿は申し訳程度にスタンプを添えた。
そのままじー、と画面を見つめていれば約1分後ぐらいだろうか。
時刻の上に既読という文字がつく。
『そうか、今日もよく頑張ったねお疲れ様。』
「そんな、普通のことですよ。」
『普通のことでもちゃんと出来るのは偉いことだよ。』
「そう、ですか?ありがとうございます。」
椿もあまり文字を打つのは早い方ではない。
ちょうどいい速度で帰ってくるメッセージを見ながら、慎重に返していく。
そして最後の文を送ってから、またしまったと思う。
これじゃ会話が終わってしまうじゃないか俺のバカ。
沈黙が流れる。
土井さんはもう携帯見るのやめちゃっただろうか。
なにか送って、なんとか会話を続けようた時だった。
その画面に新しいメッセージが増える。
『そういえば今日話そうと思ってたことがあったんだ。忘れてた。椿くんがあんなことするものだから。』
……あんなことって……。
土井さんは俺がしたよりももっとすごいことをしたくせに。
椿はついさっきのように感じるお昼を思い出しながら恨めしそうに画面を睨んだ。
まだ思い出せるあの時の智の顔。
あの時はドキドキして、状況が把握できなくて固まっていたが、よく思い返してみるとやばい。
あんなに優しそうな顔をしているくせに、椿の顔をしっかりと見つめていた。
仄かに滲み出るオス臭い雰囲気。
完全に捕食者の目だった。
抗えない、抵抗してはいけない、そう感じる目だった。
椿はそれらを思い出しながら全身を粟立たせた。
「あんなことって、土井さんがしたんじゃないですか。」
『先にしたのは椿くんだよ?』
たし……かに、そう、だけど……っ!
椿唇に指先で触れてから、その指を少し押し込んだ。
指が舌に触れて、ビリっと痺れる。
それは、だって……。
食べてるところがエロかったから。
なんて言えない。
恥ずかしい。
それにそう思ってすぐに触っちゃうなんて。
あの時の俺はどうにかしてた。
でも……土井さんのほっぺたなんかするするしてて、ときどきヒゲの感触とかして……気持ちよかった……。
「それは……!あの、話ってなんですか?」
これ以上話をしていたらボロがでる。
椿は話を変えた。
『あぁ、そう。忘れてた。椿くん、今週の日曜日は暇かな?』
日曜日……。
何かあったかもしれないけどなかったかもしれない。
とっさに予定を確認しようとするも、椿はそんなこと関係ないなと思い直す。
……もしかして……デートだろうか。
都合のいいように考えながら、椿は胸がときめくのを感じる。
「暇ですよ。どうかしましたか?」
『二人でどこか行こうかなって思ってね。どこか行きたいところとかある?』
「デートですか?」
『うん、デートだね。』
デート……。
むぎゅっと心臓が掴まれるような感覚。
椿は思わず「ほぁ……」と声を上げてしまう。
そして自分を落ち着かせるために、ベッドを何度か蹴った。
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