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「更衣室はこっちだよ。」
智が椿を案内する。
さっきから椿は一言も喋っていない。
あんなことで機嫌を悪くするなんてがきっぽくて仕方がない。
あんなこと笑って終わらせて、恋愛対象に入れるようにポイントを稼ぐべきだとわかっている。
頭の中ではわかってるのだが、なかなか体はいうことを聞いてくれない。
イライラ、切なさ、悲しさ、悔しさ。
押し込めようとする度に溢れてきて、なんだか自分だけ浮かれてすごく馬鹿っぽいような気がしてくる。
帰りたい。
「これ……一応フリーサイズだから着られると思うんだけど……。」
そんな椿のことはつゆ知らず、智はバッグの中から服を取り出している。
そんな悪びれのない仕草がどんどん椿を刺激していく。
そんなに罪悪感も感じさせないほどのことなのか。
気にかかることもないのか。
それほどまでにどうでもいいのか俺は。
「……っ」
情けない。
鼻の奥がツンとして、目の奥が熱くなる。
椿は唇をぐっと噛み締めた。
アホみたいだ。
こんな所で泣くなんて。
「椿くん?」
優しい声が椿の頭上から降ってくる。
智も流石に椿の様子がおかしいと気づいたようだった。
椿はぐっと唇を噛み締めたまま首を横に降った。
今何かを喋れば、我慢している涙が溢れそうだ。
「どうしたの……。」
智がしゃがんで椿の顔を覗き込む。
椿は慌てて口元を抑えて目を伏せた。
「もしかして親戚とか言ったの気にしてる?」
「……」
「ごめん……たしかにデートの相手を親戚だって紹介するのは失礼だった……ごめんね。許して?」
智の手が椿の瞼に触れる。
椿はゆっくりと瞼を押し開けると瞳を揺らした。
「あいつとは長い付き合いでさ……こんな年下の子とデートしてるって言うとすごく突っ込まれそうで嫌だったんだよ……」
「恥ずかしいですか……」
「いいや、そんなことはないよ。ないんだけどね。おじさんだからね……。」
恥ずかしいんだ……。
智が誤魔化すように目線を泳がせるのをみて、真意があけすけに伝わってしまう。
年下のこんな俺じゃ、この人には全然釣り合わないんだ……。
「わかりました。いいです。」
「椿くん?」
「……俺は土井さんがデートの相手だって素直にいうこともできないほど恥ずかしい存在なんですね。」
こんなこといおうと思ってるんじゃないのに。
思っていることが現実なんだと知ると、イライラしてきて、あふれるように言葉が出てくる。
こんなことしたら嫌われる。
もっと、ガキ臭いって思われる。
そう思っているのに止まらない。
「そんなつもりで言ったんじゃないよ」
「いいです別に。ほんとのことですから。どうせ俺はそこら辺にころがってる……っん?!」
ほら、土井さんだって困ってる。
だから早く口を閉じろ。
そう思った時だった。
不意に口がなにか柔らかいもので強制的に動くのを停止させられた。
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