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「どう?できそう?」
「え……あの、圧倒されちゃって……」
「え〜?」
椿の元に戻ってきた智はケロッとした顔で手を見ている。
そしてすぐに椿の顔に目線を戻すと、困ったように笑った。
「やっぱ恥ずかしいな。ほら、若い子の前でやるのって。おじさんドンくさくない?」
どんくさいどころか。
嫌味か、嫌味なのか。
椿はなんと返していいか分からずに、なんとも言えない表情をしてみる。
智は智でそれを察したのか苦笑いをした。
「かっこよかったです。」
「おだてても何も出ないよ」
「何も出ないんですか?」
「うん、出ない。ほら椿くん、僕やってみたんだからもう出来るでしょ?やってみて。」
「……ええ……。」
椿は目の前の壁を見て、眉を潜めた。
自信ない……というより、登りたくないというか。見せてもらわない方が良かったかもしれない。
あんなの見せられて……その後にやるのはなんとも……滑稽な姿を晒してしまいそうだというか。
「恥ずかしいです」
「大丈夫だよ。見ててあげるから。」
「だからそれが恥ずかしいんですってば。」
「可愛いなぁ。ほら、待っててあげるから行っておいでよ。」
子供扱いだ。
あしらわれるような対応に少し不満を覚えながらも、「待っててあげるから行っておいで」の言葉にそそのかされてマットの上に足を置いてしまう椿。
簡単な男だ。
予想外に沈む足にバランスを崩しながらも壁の前に立つ。
「うひゃあ……出来るかな……」
智が簡単に登っていた姿を思い出してみるも、目の前にそびえ立つ壁は威圧感がある。
「10って書いてある石見える?」
「あ、はい。」
「そこを掴むんだ」
椿は言われた通りに石をつかむ。
結構力がいる気がする。
「それで足をあげたらもう下に落ちたら失格になっちゃうからね。うん。足をあげて次の石を掴むんだ。」
登ってみるとわかる。
石を探すのが難しい。
椿は智の声を頼りに上まで登っていく。
流石に難易度が一番低いこともあり、難なく登れた。
「そこを両手で掴んで終わりだよ。」
一番上の石にタッチして、終わり。
ぽふりと着地して椿が振り向くと、智が微笑んでいた。
結構楽しいぞ、ボルダリング。
「楽しかった?」
「はいっ」
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