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「そろそろ移動する?」
疲れた椿はそれから暫く智を見ていた。
最初はやりにくそうにしていた智だったが、次第に慣れてきたのか、この発言をする頃には壁をするすると登っていた。
自分には到底無理だと思える壁をいとも簡単に登る智。
時折しんどそうな顔をしたり、歯を食いしばっていたり。そんないろいろな智を見て、終始かっこいい……と目をハートにしていた椿。
筋肉が隆起するさまを見て、涎をたらしそうになったというのはけして誇張表現ではないきがする。
見ているだけでとても満足した椿だった。
「土井さんは?もういいんですか?」
「うん、僕ももう疲れたかな……。結構久々だったしね」
「全然疲れてるように見えないです。」
「見栄はってるんだよ。かっこよく見られたいからさ。」
この人は誰にでもそうなんだろうか。
この人絶対プレイボーイだ。
そんなふうに誰にでも気があるような素振りを見せて気を引くんだ。
舞い上がってしまいそうな発言に、頭の中でそれを否定しながら自分を落ち着かせる。
かっこよくて仕方ないな本当に。
この人が自分だけを見てくれるなんてそんなこと有り得るんだろうか。
自分だけを愛してくれるなんて。
運命の番なんて……なかったのかもしれない。
だって、この人が俺に惹かれるなんてありえない気がする。
俺があまりにも素敵な人だから惹かれてしまっただけなのかもしれない。
きっと、そうなんだ。
あまりにも強い釣り合わなさを感じて、切なくなる。
どうしたら俺はこの人に釣り合う存在になれるんだろう。
さっきみたいに、親戚だって言い訳されずに済むんだろう。
せめてデートしてるんだって言えるようになるんだろう。
自信のある存在になりたい。
「椿くん?」
「えっ……あ、はい?」
「どうしたの?真剣そうな顔して」
「やだな、俺だって真剣な顔ぐらいします。」
「えー?何考えてたのかなぁ」
自信のある存在になりたい。
この人に誰にも渡したくないって思われる存在になりたい。
魅力的な人間になりたい。
「何でもないです。」
「もしかしたらさっきここでキスしたこと思い出したりして」
「……っ!」
椿がばっと智の方を向く。
智は智で何食わぬ顔で着替えをしている。
ちょうど椿が顔を向けた時には、上半身が裸だったりして、本当に椿のことは気にもしてもないような様子だ。
「ほんと無神経だ。」
「ん?」
「俺土井さんのこと好きなんですよ?」
「知ってるよ?」
「なのになんでそんなかっこいい身体見せつけてくるんですか?」
「ふはっ」
「意識するような事言って!!」
「うんうん」
「キスしてたこと思い出してるって言ったらキスしてくれるんですか?!」
この人は!この人は!
俺が悩んでるのも知らないで!
謎の怒りを抱えながら顔を真っ赤にしながら声を荒らげる椿に、智は限界がきたのか大きく笑った。
「だって、デートしてるんだしさ。僕のことに集中してほしいなって」
「してますよ!ずっと土井さんのことしか考えてませんし!」
「かわいいなぁもう……ご褒美、あげるね。」
ちゅ、と本当に短く触れ合う唇。
椿は目を大きく開きながら口を噤むのが関の山だった。
大人はずるい。
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