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こちらへどうぞ、と案内されて椿は小学生かと突っ込まれそうなほどあたりをキョロキョロしている。
案の定裕人に頭を小突かれた椿だったが、一瞬睨んだだけで気にしていない様子だ。
入って来たのは喫茶店のようだった。
よくこんなとこ知ってるな、と思いながら椿は席についてからもまた店内を一瞥した。
レトロな雰囲気が漂っていて、店内は狭め。
音楽も落ち着いたクラシックが流れている。
「椿くん何食べる?」
「えっ何がオススメですか?」
メニューを取り出した智が開きながら椿に渡す。
裕人はというと頬杖をついてそっぽを向いていた。
「そうだね。ここのナポリタンおいしいよ?あーでもデミグラスソースのハンバーグとか好きかも。色々あるから食べたいの食べなよ。裕人君もさ、気にせずほら食べたいの食べて」
「ほんとだ!美味しそうですね!ね、裕人何にするの?」
「……俺は軽くで……」
「うっそ!美味しそう……ピザあるよ裕人ー!」
怪訝な表情を見せる裕人とは裏腹に、椿はメニューを裕人に見せるそぶりもなくペラペラめくっていく。
そして、マルゲリータの写真を指さしながら裕人の方に向くと今にも涎を垂らしそうな顔を見せる。
「食べれば」
「ふふ、可愛いよね。椿くん」
その顔から目を離した裕人の目と、保護者の顔をしていた智の目がかち合う。
裕人は眉をぴくりと動かすとすぐに目を逸らした。
「食い意地張ってるだけじゃないんすか」
「んー?このくらいの男の子はそうじゃないと。僕、人が美味しそうに食べてるところ見るのが好きなんだ。」
「へぇ」
「こっちまで幸せにならない?特に椿くんってさ。」
こいつ、そう思った裕人が智に目を見開けば智は人差し指で椿の頬に触れた。
椿はそれにぴくっと反応すると智の方を見る。
あからさまに嬉しそうな表情をする椿。
「土井さん突然触るのやめてください」
「うん?なんで?」
「なんでって、ドキドキするからです。」
顔を赤らめてしっかりと智を見つめ返す椿に、裕人は唇を引き結んだ。
そして智を見据える。
「はは、可愛いな」
「も、もう……!」
チッと舌打ちしたくなるのを堪えた裕人は、頬杖をついていた手で椿の太股を抓った。
「いっ、いった?!」
「デレデレしすぎ、俺いるんですけど」
「仕方ないじゃん!す、好きなんだもん!」
「はは、可愛いよね椿くん。困っちゃう。」
何が困っちゃうだ。
見せつけやがって。
ひたすら言葉を飲み込む裕人のストレスゲージは徐々にマックスに向かっている。
悪意なんて全くありませんと書いてある顔で裕人に笑顔を向ける智。
計算し尽くされた大人のちょっかいのかけ方に、裕人はぐうの音も出すことが出来ない。
裕人は黒で支配されていく頭の中で必死に考えると、口角を上げた。
「ほんと、こいつ手がかかるヤツなんで。朝も起きられねーし、なぁ椿」
「は?!ちょ、何言ってんの!」
「昨日だって俺が起こしたもんなぁ?」
「起きてたし!」
「今日は?」
「……っ!」
今日は?という裕人の言葉で頬を赤らめて目を見開く椿。
意地悪い顔をした裕翔の顔は少し歪んでいたが、その場にいる誰も気づくことの出来ない程度の歪みだった。
椿は顔を赤らめたまま、キッと裕人を睨む。
「あは、可愛いでしょ?土井さん、こいつ。」
得意気な顔で智を見遣った裕人。
椿は口を動かしているが言葉が見つからないようだ。
「お水、ご馳走様でした。あとは二人でごゆっくり。遅れんなよ椿」
「裕人?!」
ガタリと音を立てて席を立った裕人は、グラスをカツりと智のグラスに当てるとそのまま店を出た。
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