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料理を食べ終わっていつもの様に智が会計をする。
椿はまたそれを眺めるだけに終わってしまったことを後悔しながら店の外に出た。
「じゃあね、椿くん。」
「あ、はい。」
「これから学校かぁ」
「土井さんもですよね。仕事……」
「うん、あともう少し。頑張ろうか」
「はい……」
楽しい時間はあっという間だな。
そう思いながら一抹の寂しさに椿は下を向いた。
昨日も会って、今日も会って。
会いすぎなのに足りないと思ってしまう。
もっと一緒に過ごすことが出来たらいいのに。
明日も明後日も。
むしろこの時間が終わらなければいい。
「どうしたの椿くん。元気なくなっちゃって。」
「楽しかったなって思って……」
「うん?じゃあどうしてそんな顔をするの?」
智が椿の頭を撫でた。
軽い重みに体がじんわりと暖かくなるのを感じながら、椿は唇を結んだ。
「もっと……一緒に居たいなって……思っちゃって……。」
「はは、可愛いなもう……椿くんそれわざとしてるの?すごいテクニックだなぁ」
「わざと……?」
「そんな訳ないか……。すごい、好きになっちゃいそうだよ」
「……好きになってください……。」
頭から降りていった手を掴んだ椿はその手を両手で掴んで智を見上げた。
「うん……なっちゃいそう……」
「なって欲しいです……。俺と同じ気持ちになってほしい……。」
「でもさ、僕じゃ役不足……じゃない?」
「そんなことないです。俺はあなたがいいんです、むしろ土井さんじゃなきゃダメです。」
「参ったな……」
「好きじゃなくてもいい……好きにさせますから……付き合いましょう?土井さんがどんな素敵な人と付き合ってたとしても……後悔はさせないように頑張ります。」
「……椿くん。」
体の中が熱くて、ぽかぽかする。
外の気温が既に暑いのに、中からも熱が出てる。
両側から熱せられておかしくなりそう。
椿は智を見上げながら目を潤ませた。
そんな瞳を見ながら智は参ったと言うように目を逸らす。
「素敵なお誘いだけど、もう少し考えさせて……。」
「……はい。」
期待はしてない。
そんなにすぐにはいと言ってもらえるとは思ってない。
けれど、すごく苦しくて椿の心臓はぎゅうと縮こまった。
でも、考えさせてってことは希望がないわけじゃない。
椿はすぐに新しい思考を生まれさせると下を向いて瞬きをした。
「ごめんね、椿くん。」
「いえ、俺いつまでも待ちます。絶対好きにさせます。俺じゃなきゃでもダメって……思わせてやるんだ……。」
「うん……。」
智が椿の頬を撫でる。
椿はその感覚に心地よさを覚えながら「好き」と呟いた。
例えるなら、冬の寒い日にストーブに当たってるようなそんな心地よさ。
幸せと気持ちよさと。
やっぱり……土井さんと俺は魂の番なんじゃないかって思う。
こんなにも惹かれて、離れることが出来ない。
土井さんだってきっとそう思ってる、そう思うのに。
「また会おうね椿くん。」
いつもの顔で手を振る智を見て、椿の胸にはモヤモヤが広がっていくばかりだった。
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