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「おせーよ」
「イイじゃん間に合ったんだから……。」
「……。」
機嫌が明らかに悪い裕人に椿もイライラしてくる。
隣に腰をかけた椿は裕人を睨んだ。
「裕人、お前なんなの」
「何が」
何が、何が?!
心当たりねーのかよ。
いきなり朝襲ってきたり、あんな態度とったり。
裕人が自分から目を逸らして低い声を出すその様子に、椿の溜まっていたイライラが徐々に表出してくる。
自分が被害者みたいな顔しやがって。
やりたい放題しといてその態度かよ?!
ほんとイライラするなこいつ!
被害者はこっちだっつうの!!
「今日だよ今日!お前おかしいぞ」
「おかしくねーだろ」
「は?!お前いっつもあんなんじゃねーじゃん。態度悪すぎ!しかも最後!感じ悪すぎだろ?!」
いつもは誰にでも笑顔を振りまいて、ヘラヘラ笑っている裕人。
そのくせに智と対面している時は笑顔どころか終始睨んでいたような気だってする。
「それを言うなら向こうだろ。売られた喧嘩買っただけだっつうの」
「何言ってんだよ!売られてねーし!お前が勝手に勘違いしただけだろ?!」
「……お前だってヘラヘラしやがって。俺がいること忘れてたんじゃねーの。気色悪い顔見せやがって気分悪いっつーの」
ブチッ。
椿の頭の中でそんな音が聞こえた。
「……はぁ?!お前なぁ!イライラしてんのはいいけど他人に当たるのやめろよ!俺だけならまだしも土井さんにまで!!」
「土井さん土井さん土井さんってお前なぁ?!良いアルファが見つかったからってフェロモンばら撒きながら誘いやがって。さすが淫乱オメガだなぁ?!猿みてぇにヤることしか考えてねぇんだろ!ハッ!!」
裕人が歪んだ顔で椿に罵声を浴びせる。
先程までは雑音が聞こえていたはずの辺りが静まり返って、辺りの視線が二人に集まっているのを感じた。
裕人は息を切らしながらハッとすると辺りを見回した。
案の定視線は二人に集まっていた。
二人、というか椿に。
そして次の瞬間ひそひそと小さな声が聞こえ始める。
慌てて裕人が椿に目を戻した時にはもう手遅れだった。
呆気に取られたような顔をしていた椿の顔は、みるみるうちに歪んでいく。
「……っお前……そんなふうに思ってたのかよ俺のこと」
「ちっ、ちが」
「何が違うんだよ!お前もそうやって俺の事見てたんだな。所詮オメガっつって見下してたんだ。何も出来ねぇって。それでイライラしたら俺で解消ってか。は、オメガはただの穴だから嬉しいだろっつって?」
「違う椿!」
「違わねーよ!今のが事実だろ!?もういい帰る。」
「おい椿!」
「金輪際顔見せんじゃねえ絶交だ!!!」
最後の方には涙を溢れさせていた椿は、置いたばかりの鞄をひっ掴むとそのまま席を立った。
裏切られた気分だった。
今までで一番悲しくて苦しかった。
レイプされた時よりも、オメガだと陰湿ないじめを受けた時よりも、ショックは大きかった。
「見てんじゃねぇよ!!!」
騒ぎのせいか視線が集まるのにイライラして椿は出口付近で声を上げるとそのまま教室を後にした。
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