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『ごめん』と来ていたラインは無視をした。
椿は家に帰ると布団に包まり目を瞑った。
「絶交だってよ……はは、小学生か。」
19年ずっとそんなことを思われていたのだろうか。
オメガだから、あいつはそう思っていたのだろうか。
あいつだけは自分をそんな風に扱ったりしていない、そう思っていたのに。
小さい頃から椿を守ってくれていたのは裕人だった。
近所のよしみで自分がオメガだと発覚する前から付き合いを続けていた裕人と椿。
椿の母親はオメガで父親はアルファだ。
アルファが大人数のオメガを囲うのが当たり前なこの世の中だが、父親は母親1人としか関係を持っていなかった。
そして二人は愛し合っていた。
またその間に生まれた自分は二人に愛されていた。
とても幸せな家庭で育った。
そんな環境で育った椿だったからかこそ、自身がオメガだと発覚しても取り乱すことはなかった。
自分も母親みたいに幸せな未来が待っていると思った。
愛してくれる人と出会って、自分もまた子供を愛する人と愛していくのだと。
世の中にはオメガとわかった瞬間自分は終わりだと絶望する人がたくさんいるらしい。
でも椿はオメガだからと言って悲観することがなかった。
環境に恵まれていたのだと思う。
母親には「大変だけど大丈夫。きっと幸せになれるわ、あなたを大切に思ってくれる人はたくさんいる。お母さんも支えるから。」そう何度も励ましてもらっていた。
裕人だって例外ではなかった。
オメガだと伝えても以前と変わらず、同じように接してくれていた。
それどころか、危ない目に遭えば助けてくれて守ってくれていた。
椿は愛してくれる両親と裕人と一緒にいたからこそ、今までどんなことがあっても明るく生きてきたのだ。
「もう嫌い、あんな奴。」
椿は裕人を思い出しながら寝返りを打った。
いつも椿が悪口を言われたり、いじめを受けていた時に助けてくれたのは裕人だった。
中学の頃オメガだと分かって、知らず知らずのうちにクラスに知れ渡っていた。
避けられ、触ったものは菌が着いていると汚いもの扱いされた。
周りはどんどん離れていくのに裕人は俺が一人にならないように、仲良くしていた友達を捨てて俺を選んでくれた。
なのに。
それだけじゃない。
思いがけず発情期になってしまってレイプされた時も、見捨てず助けてくれたのは裕人だった。
母親だって父親だって精一杯ケアをしてくれたけど、一番ケアをしてくれたのは裕人だった。
苦しむ自分に手を差し伸べてくれたのも裕人だった。
話を聞いてくれて励ましてくれて。
どうして裕人はあんなことを言ったんだろう。
初めからそう思っていたなら、どうしてこんなにも俺に色々してくれていたんだろう。
「……っ!!!!」
裕人とのラインを見返そうと思ってスマホを見た椿は飛び上がった。
「バイト遅れる!!!!」
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