アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
63
-
「僕はね、オメガのこと正直苦手なんだ。僕はアルファ家系でね。子供だっているし結婚もしてる。」
智が射精した瞬間逃げるように風呂場に来た椿は火照った体をなんとか冷まそうと水を被った。
体が震えて、どんどん体温が下がっていく。
「ひぅっ、ぐ……うっ、うぅ……っ」
どうして今言ったの。
どうしてこんな時に?
快楽を与えながら絶望を突きつけてくる彼は酷い。
俺が決して彼から離れられない。
それを知っていながらそういうことを言う。
酷い人だ。
今まで出会った誰よりも。
俺をどうしたいの。
俺はどうしたらいいの。
こんな酷いことを言われたのに好きで好きでたまらない。
どうしたって好き。
智さんが好き。
椿は溢れ出る涙を拭いながら嗚咽をする。
幸せになれると思っていた。
幸せが待っていると思っていた。
だからどんな事でも耐えられた。
この分幸せになれると思っていたから。
「椿くん」
「来ないで下さい」
「風邪を引くよ」
「来ないで!!」
「椿くん」
大きな声を上げたにも関わらず、足を進める智。
浴室に入ってきた智は水を止めた。
降り注いでいた水が止まって椿は身震いをする。
その優しさにまた苛立ちを覚えた椿はキッと、智を睨んだ。
「酷い、智さんは俺をどうしたいの?ずっと俺のこと嘲笑ってたの?馬鹿な事言ってるって思ってた?!ねぇ!!」
デートで浮かれて。
絶対好きにする!なんて豪語して。
全く可能性がないことを言ってた俺。
傍から見たらどれだけ滑稽なんだろう。
「思ってない。」
「じゃあどうして何も言わずに優しくしたの……っ」
「君とはほかの人とは違う繋がりを感じたからだよ」
「……っ」
「好きだよ。この気持ちは本当。」
「聞きたくないよ……聞きたくない。」
それなのに好きって言う。
好きって言わないで。
嬉しくもない。
苦しいだけ。
「離したくない。一緒にいたいとも思う。」
「矛盾してる。どうして結婚してるって……っ」
「聞かれなかったから。」
「うっ、ひう……っく、」
「君と将来を歩むことは出来ない。僕には子供もいるし、君より大事にしなきゃいけない人がいるから。」
信じたくない。
心臓を掴んで引きちぎられるような感覚。
痛くてたまらない。
痛い、苦しい、辛い。
「……っ、本当なの?嘘って言ってよ!!」
「本当だよ。もうすぐ高校生になる子供がいる。写真もある。見るかい?」
「馬鹿じゃないの……っ馬鹿じゃないの!!」
「君ともっと早く出会っていれば何もかも違ったかもしれない。」
「……っ何いってんの、俺がオメガなのは変わらない。俺がオメガだからその家族よりも俺を取れないって言ってるんでしょ……っ」
「僕がもう少し若かったら全てを振り切ることも出来たかもしれない。ごめんね。」
頭の中ではわかってる。
どうしても譲れない部分があるって。
大人だから色々あるんだって。
家族がいるのも、その家族よりも俺を取れないこともわかってる。
分かりたい。
分かりたいけど理解したくなくて。
俺がオメガじゃなかったら何もかもきっと変わってた。
ずっと自分が望んでいたことなのに、今ではこんな瞬間来なければよかったと思ってる。
世の中そんなに上手く出来ていない。
みんながみんな幸せになれるわけじゃない。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
63 / 131