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暑い。
その言葉が耐えない夏真っ盛り。
しかし、カレンダーはもう残り3枚という時期まで来ていた。
大学生の夏休みも残すところあと1ヶ月。
サークルに入っている裕人とサークルに入っていない椿。
しかもお互いにしているバイトは違う。
学校がなければ共有する時間が無い。
ついでに夏休みになって派遣のバイトなどをするようになった裕人は、余計に椿と一緒にいられる時間が少なくなっていた。
ついでに、椿は週末はいつも実家に帰っているようで遊びに行こうと誘い出されることもない。
正直椿は、発情期のとき以外は自分にあまり興味を示してくることがなかったりする。
いつも自分が構い倒しているだけなのだ。
今日は午後までバイトが無いが、椿は夕方までバイト。
恐ろしいすれ違い具合に一人落胆しながら、裕人は暇を潰すために町中をブラブラと歩いていた。
あれから椿はそれなりに毎日を過ごしているようだった。
土井という男と何があったのか詳しくは聞かなかったし聞けなかった。
一人でいると考えてしまうようだが発情期が終わり、裕人と2人でいる間は比較的笑うようにはなっていた。
正直あんなに取り乱した椿を見たのは初めてで。
あの瞬間に居合わせた、恐怖ともショックともとれない感覚はまだ覚えている。
ふと椿のことを思い出して、智に対する怒りを思い出した時だった。
「……?」
前に椿と智、それから裕人で入った喫茶店に見覚えのある男が入っていく姿が目に入った。
その男とはまさに話題の渦中の人物。
ぶり返す怒りのまま、裕人はその店に足を進めると店のドアを開けた。
「いらっしゃいませ」
レトロな雰囲気の喫茶店。
マスターがこっちを見ているのを無視して裕人は、そのままカウンターの一番奥にいる男に向かっていく。
「おい。」
自分でもびっくりするほど低い声が出た。
その声に反応した男はゆっくりと裕人はの方を振り返った。
「君は……えっと……っ!?」
間違いない。
少し目を見開いて裕人を見た男は間違いなく智だった。
裕人はその胸ぐらを掴む。
ガチャりとカウンターが揺れる音がして、智の目の前にあった水が零れた。
裕人は殴りそうになるのを寸で堪えるとその胸ぐらを持ち上げて睨んだ。
「覚えはあるだろ」
「まって、殴らないで」
「俺も今耐えてるとこだよ」
気まずそうに目を逸らしてから、両手を上げて降参のポーズを取る智。
カウンター越しにいたマスターが「お客様。」と咎める声を出して机の上に広がった水溜りにお手拭きを翳す。
それを見て裕人は手を離すと舌打ちをした。
「血の気多いね。いいな若者って」
「茶化してんじゃねぇ殴るぞ」
「痛いから嫌だよやめて……。とりあえず座って。前ご馳走できなかったからご馳走させてよ。ここの料理美味しいんだ。ねぇマスター」
智の言葉にマスターがニコリと笑って会釈する。
イライラする。
裕人は握った拳をもう一度握って智を睨んた。
しかし智はというと椅子を引いて「さぁ」と声を出しただけだった。
「あんたと食事をするってだけで反吐が出そうだ」
「そう言わないで。おいしいから。何にする?」
「話逸らしてんじゃねーよ」
余裕そうなその態度がイライラする。
何も気にしてないそんな態度が。
椿がどれだけお前の言葉に傷ついたか。
椿はあんなにも憔悴して取り乱して、あんなにも自分を、自分を憎んだのに。
こいつは全くそんなことも知らずにへらへらと。
そんな奴が椿の心を支配しているのだと思うだけでイライラする。
ムカつく。
「だって君には関係の無いことでしょ。」
「あ?」
「これは僕と椿くんの問題だから」
「あのなぁ?!あいつが数日間どんな風になってたのかあんた知ってんのか?!」
「……悪いことしたとは思ってるよ。」
「悪い事した……ってそんだけかよ!!」
どうしてあいつはこんな奴が好きなんだ。
こんなやつが運命の相手だなんていうんだ。
他にいくらでもいい奴いるじゃん。
こんな奴じゃなくても……っ。
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