アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
71
-
智からは相変わらず少しずつ連絡が来ていた。
元気にしてるか。
学校にはちゃんと行っているか。
そんなご機嫌を伺うような連絡ばかり。
椿はそれに返事をする気力もなく、あの一件から一ヶ月が経過する頃には智からの連絡もかなり頻度が落ちていた。
会いたい。
好き。
その気持ちは椿の中では変わることがない。
けれど会ってなにをするのか。
どんな話をするのか。
そもそもどんな顔をすればいいのか。
それがわからなくて会おうとは思えなかった。
智が言いたいことは理解していた。
俺との未来は可能性がないということ。
今更家庭を捨てて俺だけを選ぶなんて出来ないということ。
「……はぁ。」
恋って苦しい。
こんなにも毎日考えて悩んで。
苦しんで。
今まで誰かに熱をあげたことがない椿は、正直参ってしまっていた。
どうしたらいいのか分からない。
椿は街中で智を見かけることがあったが、見つからないようにしていた。
隠れたり時間帯をずらしたりと、極力鉢合わせないように。
しかし夏休みに入った今、智の姿はめっきり見なくなってしまっていた。
会いたい。
けど、会いたくない。
バイトが終わって家に帰った椿は、智との会話を見返してため息を吐いた。
あんなに楽しかったのに。
世の中そう簡単には出来てないことを知ってはいるつもりだったけど、こんなにも難しく出来ていることを知らなかった。
これから自分はどうなるんだろう。
どうやって生きていくんだろう。
思えば他人任せに生きてきた気がする。
「うわっ」
静かだった携帯が椿の手の中で音を立てる。
椿は肩を揺らしながらその画面を見た。
メッセージが表示されている。
その送り主は裕人だった。
『会いたい。』
「会いたい……?なんだこいつ。」
センチメンタル過ぎる文字列に笑いそうになる椿。
いつもならそんなメッセージなんて寄越さずに家に押しかけてくるくせに。
結局思わずふっと笑ってしまった椿は『いいよ。』と返信した。
すると一分も経たない間に返事がきた。
『迎えにいくからちょっと厚着してでてきて』
「厚着……?」
もう着く。
という追加で来るメッセージ。
こいつなに考えてるんだ。
椿は言われた通りにカーディガンを羽織ると家の外に出た。
玄関の扉を出てから下を見下ろせば、そこには1台のバイクが停まっている。
裕人のバイクだ。
ヘルメットのシールドを押し上げた裕人が椿を見上げた。
携帯に目を落とせば「ついた」とメッセージが来ていた。
椿は訝しげに眉を寄せるとそのまま階段を降りる。
まだ秋とは言えない気温をしている日中だが、夜は涼しい。
風は少し生ぬるいが、秋の気配を感じる。
「どうしたの裕人」
「言ったろ。会いたいって」
「なにそれ、きしょい」
「ひでーな」
ぐしゃぐしゃと椿の頭を撫でた裕人は、バイクから降りるともう一つのヘルメットを取り出して椿に渡した。
「なに?どこいくの?もう夜だよ」
「デート」
「は?!」
「嘘。お前は乗ってればいいから付き合えよ」
切っていたエンジンをかける裕人。
椿は頭の中を?で埋め尽くすと言われた通りに裕人の後ろに座った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
71 / 131