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ぷは、と唇を離せば少しびっくりしたような顔をした智と目が合う椿。
椿は自分の唾液で濡れて光る智の唇にまた吸い込まれそうになった。
「積極的……椿くん」
「ダメですか?」
びっくりしたような顔で言われて、我に返ったようにはっとする。
無我夢中で自分がどんなことをしているのか自覚がなかった椿は、顔を赤く染めた。
「ううん、ダメじゃない……むしろ、もっとして欲しいかも。」
目を細めて椿を見る智。
正直外の街灯を頼りに相手の顔を探るしかないぐらいに暗い車内。
しかし、椿の感覚は研ぎ澄まされていて智の表情が全てはっきり見えるような気がする。
「……いいんですか?」
「うん。して、椿くんから」
目を細めて椿を見る智。
自分からはもう何もしないというように見つめられる。
椿は智を見上げながら息を詰めた。
いざこうやって構えられるとすごく照れる。
智の唇を見つめれば、整っているその唇が目に入る。
椿はその感触を知っている。
触れ合って感じる快感を知っている。
引かれるように顔を近づけた瞬間だった。
智が眉を潜めた。
静かな車内に携帯の着信を知らせるバイブの音が響いた。
「ごめん。」
「あ、いえ……どうぞ……。」
椿がぽかんとしながら智を見る。
智はポケットに手を入れるとそのまま車の外に出ていった。
ポツリと車内に残される椿。
急に一人にされて上がっていたテンションが下がっていく。
智が自分に背を向けて電話をしている姿を見て、椿はシートに座り直した。
誰だろう……こんな時間に。
もしかして、智さんの奥さん?
そうだよな……こんな時間に外出てたら何してるのか気になるよなぁ……。
突然現実に引き戻された椿は、上がっていたテンションを急降下させていった。
智さんは子供がいてお嫁さんもいるんだ……。
帰ってこいって言われたのかな。
結局智さんって自分とどういう関係でいたいんだろう。
俺をどうしたいんだろう。
智さんは俺のことを好きって言ってた。
離したくないって言っていたのに、一緒にいるのは無理って。
どうするのが正解なんだろう。
一緒にいるのは無理って言われたって、俺はきっと智さんを忘れることなんてできない。
こんなに惹かれる人きっともういない。
智は違うのだろうか。
そう思っていれば智は車内に戻ってきた。
「ごめんね?」
「奥さんですか?」
「え?」
本当はこういうこと聞かない方がいいのかもしれないけど。
思わず聞いてしまった椿。
「え?」
しかしびっくりしたように目を見開く智に、自分も目を見開いてしまう。
なんでそんなびっくりしたような顔するんだ?
そんな変な事言ったか?
「あ、あー違うよ。仕事先」
しかし、しばらくしてからハッとしたように首を振る智。
椿は首をかしげながらもう追求しないことにした。
「帰らなくてもいいんですか?心配してるんじゃないです?」
本当は帰って欲しくない。
だけど、なんとなくわがままで居たくなくて。
次を手に入れたくて、椿はどこで学んだのかもわからない物わかりのいいフリをした。
「気にしなくていいよ。せっかく2人でいるんだからさ、僕のことだけ考えてよ」
「……う……」
どの口がいうんだ。
俺のこと一番にできないって言って、事情があるから俺のために時間もたくさん割けないみたいな事言ったくせに。
狡い大人だ。
でも最初からそうだった。
智さんは付き合うことに乗り気じゃなくて、俺が強引に押し切って……。
無理やり付き合ってくれてるだけみたいなとこあった。
正直僕が一方的に傷ついていただけだったのかもしれない。
いやでも……デートしたりキスしたり……その先をしたりして希望をチラつかせた智さんも悪い……と思う。
「椿くん。こうして触れたかった」
「俺……もです。」
「うん……」
智が椿の頭を撫でる。
あぁ……好きだ……。
あぁ……俺はどうしたらいいんだろう……。
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