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「椿くん?何を考えてるの?」
椿がぼうっとしていれば智が椿の顔をのぞき込んだ。
放心していた椿はハッとすると目の前の智の顔に焦点を合わせた。
「え?」
「上の空だから。どうしたの?」
頭をポンポンと撫でられて椿は目を泳がせた。
「この前……言われたことを考えてたんです。」
「あぁ……うん。」
「智さんは」
「ねぇ、こんな話をするのにこんな所はなんだから……場所を変えようか?」
椿の言葉を遮った智は椿の頭に置いていた手をそっとハンドルの方に戻した。
さきほどの雰囲気が嘘のように冷たくなっていく気がする。
冷房をかける音だけがやけに大きく響いて椿は後悔した。
でも、なんとなく智がどういうことを望んでいるのか知らなければいけない気がする。
でも金輪際会うのをやめようと言われたらどうしよう。
ふとそう思ってハッとした。
全然考えていなかった。
どうしよう今日で最後だとしたら。
最後にきっちりと智が自分に別れを告げるために会ってくれたのだとしたら。
じゃああんな態度をとった俺に、こんなに優しくしてくれるのも前の罪滅ぼし?
最後だから?
「……そうですね……」
「かと言ってこんな時間だからいい場所はないんだけど……人に聞かれたい話でもないし。」
椿がぐるぐると考え込んでいるのもつゆ知らず、何を考えているのか分からない智は話を進めていく。
「俺の家……上がりますか?」
「え?」
「すぐ……そこですし。」
「いいの?」
ぼうっとしながら言ってしまって椿ははっとした。
思わず言ってしまった。
今更後悔しても遅い。
「え……あっ、来ると思ってなかったので汚いですよ?!」
慌てて訂正するも智は椿の顔を見てニコニコしているだけだ。
「別にいいよ?」
「……えと、じゃあ……」
今更ごめんなさい無理です。
なんて言えなくて、椿は内心頭を抱えながら自分の部屋がある位置を見上げた。
かなり汚い……。
洗濯物なんて出しっぱなしだ。
脱いだ服もそのままかもしれない。
「じゃあ車動かしてくるね」と言う智を見送って椿はあぁあ……と頭を抱えた。
後悔先に立たずとはまさにこの事。
智が歩いてくるのを見て椿はとりあえず洗濯物をどこかに隠そうと画策した。
「すごい、男の子の部屋って感じだね。」
わざわざ智を締め出し、洗濯物を片付けた椿。
しかしその努力は実らず、案の定玄関に立った智に「わぁ」と声を出させる結果になってしまった。
最悪。
こんなことなら裕人に片付け頼めばよかった。
小手先の小細工なんてすぐバレてしまう。
洗濯物を片付けたぐらいで綺麗には見えない部屋。
日頃の怠惰があけすけになっている。
「すいません……男の子なんで……」
「うん、再認識した」
「えー……?」
「いや……ちゃんと付いてるもんね」
顎に手を置いてうん、と頷く智。
椿はうんざりと部屋を見ていた目をまん丸にしてを智に向けた。
「は?!何言ってるんですかやめて下さいよ!!」
「えー?変な事言ってないよ」
「いや、変なことしか言ってないですけど?!」
「椿くん下ネタ苦手なの?」
きょとんと首をかしげられる。
その仕草に椿は頬を赤くして膨らませた。
「バカにしてますか 」
「してないよ?」
「……下ネタで楽しめるのが大人の嗜みっていうんですか!」
含み笑いで答える智に椿は拗ねるように声を出した。
確かにクラスメイトが話している下ネタの話に参加したことは無い。
裕人でさえも参加している話に椿はいつも遠巻きから聞いているだけだった。
自分の狭い交友関係を見抜かれた気がして椿はヤケになってしまう。
「違う違う落ち着いて」
「智さんはすぐそうやって俺を子供扱いする!」
「男の子は下ネタ好きだと思ってた」
「何なんですか!下ネタが好きじゃない男の子の方が好印象ですからね!」
「えー?そう?下ネタって万国共通なんだよ?」
まだまだ子供だな、なんて言いたげな智の顔に椿はムキになって言い返す。
しかし白熱する椿とは対象に、微笑む智に椿は適わないと悟った。
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