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12月10日
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【Side.C】
本当に、この鬼はどれだけ僕を喜ばせたら気がすむのだろう。
「ミツさん…ありがと、っ、ありがとう…!」
「礼を言うべきは、俺のほうだ」
「そんなっ、」
後から後から溢れる涙を、彼の手が優しく拭う。
ああ、どうしよう。
キスがしたい。
キスがしたくて、堪らない。
キスして、もっと、触って欲しくて堪らない。
「ミツさん、」
こらえきれず伸ばした手を、彼は困ったような顔で受け止めた。
そしてそっと、元の場所に戻した。
「後で、な」
一瞬動いた彼の視線を追って振り返れば、苦い顔で笑う父親の姿。
完全に、忘れていた。
「あ…」
「ごっほん」
そのわざとらしい咳払いに、急激に顔が熱を帯びるのが分かった。
「うー、ミツさんのせいですよ」
「何がだ」
「父さんに、恥ずかしいとこみられました」
「…そりゃ、悪かったな?」
「うう、恥ずかしい…」
「そんな事言ってる場合か?朝日が昇る前にここをでなきゃなんねぇんだ…今は父親のとこ行ってこい」
「っ、はい!」
まるで違和感しか無いのに、不思議と体は歩き方を覚えているらしい。
「わっ、と」
よたよたとしながらも、ちゃんと体は前へ進む。
そして自分の足で、父親の腕の中に飛び込んだ。
「父さん、ただいま!」
「ああ。お帰り、千秋」
「僕ね、父さんに聞いて欲しい話がいっぱいあるんだ」
「ふふっ、ぜひ聞かせてくれ」
「でもね、その前に、ちゃんと紹介させて?」
こいこい、と。
振り返って手招きする。
すると彼は不思議そうに首を傾げながらも、側に歩み寄ってくれた。
その手を握って。
「満月さんっていうんだ。とっても強い『鬼』さんで…僕の、大好きな人」
この世界で一番好きな人を、父親に紹介した。
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