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第二章:死神と魔王3
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「痛い!」
「そりゃ痛いよ。君ケガしてんだから」
魔の傷の手当てをしてあげる。
顔から足まで傷だらけだ。
家に帰ってきてしまったけれど、そう言えば、本局で研修中だった気がする。
まぁ、いいか。
どうせクソつまらない研修だから。
包帯を巻き終え、パタンと救急箱の蓋をしめた。
「ところで君は皇太子だよね?」
「ふへ!違います!」
「いや、皇太子だよね?」
「あ…はい…」
「え!?マジで!」
「え…」
数日前、ニュースで見たんだ。
外国に留学していた次期魔王、つまり皇太子が帰国したって。
その時テレビに映っていた顔とよく似ていたから、茶化すつもりで言ってみたんだけれども、まさか本物だとは。
「やっぱりバレるよね…」
皇太子はポリポリと、指で頬を掻いた。
「僕、魔王の支配政治がうんざりなんだ。独裁なんて今時流行らないよ。国はトップのものじゃない。民のもなんだ」
皇太子はきゅっと眉間に皺を寄せる。
「なのに、全然誰も聞いてくれない。そりゃ甘い蜜吸っている方が楽だもんね。でもそれじゃダメなんだよ。いつか滅びる。僕は、この国を直してやりたいんだ」
甘えっ子そうな見かけによらず、ずいぶんとしっかりした考えを持っている奴なんだな、と思った。
幼げに見えていた彼の顔が、今は心なしか同性ながらに男前に見える。
――いいね。
僕もかつては、意志があって、何とかして貫きたくて、必死に逆らったこともあった。
でも結局、僕の意志なんて取り巻く周囲からすれば、役立たずな小さきもので、意志を持つほどに苦しいだけだった。
だから、僕は諦めて、毎日無意味に笑っておくことに決めたんだけど。
目の前の若き魔は、僕が対面したものなんかよりも、もっと大きなものに逆らおうとしている。
――面白い。もっとこの子を見ていたい。
「ここ居る?」
「へ?」
「追われているんでしょ。魔王の軍勢に。ここにずっと隠れていればいいじゃない。ここで反政活動でも何でもしたらいいじゃない」
皇太子は目を見開いた。
「本気なの?魔国軍を甘く見ちゃダメだよ。目的のためなら何でもするんだ。たとえ神が相手でも」
「神を甘く見ちゃダメ。僕は君が気に入ったんだよ」
僕は何故、こんなにも執着したのか?
ただ、皇太子が頬に俄かに染めて頷くのを見て、すごく嬉しかったんだ。
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