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同窓会②
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ー同窓会当日ー
「お久し振りです先生」
「お前…木下か?元気そうだな~」
再会は、思いの外アッサリしたもんだった。
話したい事はいろいろあったはずなのに、俺の口を吐いて出たのは挨拶程度のセリフだけ…
「あ、吉井先生だ~!昔と全然変わってな~い」
「悪かったな~童顔で」
本当に、あの時のまんまだ…
10年振りの再会も、テンションの高い女子たちに割り込まれ、先生はあっという間に俺の前から遠ざかっていった。
「ね~先生結婚は~?」
ふと、一人の女子が先生にそう質問している声が耳に入って来て、胸がざわついた。
「このまっさらな左手の薬指をみれば分かるだろ…お前ら先生の心配より自分の心配しろー」
先生、結婚してないんだ…
って俺、何ホッとしてんだ?別に先生が結婚してないからって、どうこうなる訳じゃないのに。
「じゃあ私、売れ残ったら先生にもらって貰おうかな~」
「そう言えば由美子、先生の事好きだったもんね~」
俺も…俺も好きでした。
「あ、なあなぁ木下、お前中学の時、いくら聞いても好きな娘教えてくんなかったじゃん。結局誰が好きだったんだ~?」
さっきの女子の話の流れからか、よくつるんでいた友達が突然俺にそう聞いて来た。
無意識に先生の姿を見つめると、先生の視線とぶつかった…と、思ったらそのまま目を逸らされて…
あれ?今、目合った?
「まだ言わない気か?10年経ってるんだから教えろよ~誰だったんだよ?」
「先生」
さっきの態度が気になって、俺がそうハッキリ言うと…
『ーブッ!!』
先生は飲んでたカクテルを思いっきり噴出した。
「ちょっと、吉井先生大丈夫~?シャツ染になってるよ」
「ははは…いや~まいったな…トイレ行って落として来る」
明らかに動揺しながら先生は俺の横を足早に通り過ぎ、トイレへと向かった。
「…俺もトイレ行って来る」
「木下お前逃げるつもりか!?あ、分かったぞ、先生って保健の涼子先生だろ~綺麗だったもんな~」
そんな的外れな同級生の言葉を背に、俺は先生の後を追い、歩き出した。
『あの時のキスの事覚えてますか?』
『どうしてあの時真っ赤な顔で、俺から逃げたんですか?』
10年間記憶の片隅にあったあの日の疑問符が俺の頭の中を巡っていた…
ーザーザーー
トイレのドアを開け、中に入ると洗面台の前でシミの付いた胸元と格闘する吉井先生の姿があった。
「あーあーダメっすよ先生。いきなり水で濡らすとシミが広がります」
「き、木下か」
先生はビクリと驚くと、俺の顔を見て困ったような顔を見せた。
「こういう時は当て布をして裏から叩くんです…貸して下さい」
俺は先生の手からハンカチを奪うと、向かい合いシャツのシミ抜きを始めた。
先生はシャツを着たままなので、かなり顔が近い。おまけに鎖骨が丸見えで、いやがおうにも意識してしまう。
「悪い…さすがクリーニング屋の息子だな」
驚いた。
「そんなこと良く覚えてますね」
たったそれだけの事なのに…俺、かなり舞い上がってる…
「そりゃあ…お前はクラス1の問題児だったからな。そのくらい先生も覚えてるよ」
「それじゃあ、あの日の事も覚えてますか?」
もっと、タイミングとか考えて聞くはずだったのに、気付けばそう口走っていた。
「あの日の事?」
「俺が、先生に…その…」
覚えてる保証はない。さっき俺と目が合ったのも、カクテルを噴出したのも、単なる偶然かもしれない。
万が一覚えて無かったとしたら…言わない方がいいんじゃないか?
そう思うと、ここまで来て肝心な言葉が、喉の奥で詰まってしまった。
「お前が、俺に?」
先生は相変わらず首を傾げながら怪訝そうな顔で、俺を見つめている。
覚えていないのなら思い出して下さい…
―グイッ―
俺はあの時と同じ様に先生の腕を掴んだ。
「―痛っ…な…なんだ木下?どうし…」
そのまま顔を近付けて、唇まであと数センチ…
ーガチャー
「おーい木下居るのか~?あ、居た居た~遅せーよお前うんこだったのかぁ?」
ー!!
張り詰めた二人の空気が、酔いの回った同級生の登場によって破られ、俺は思わず掴んでいた先生の腕を離した。
「あ、吉井先生も遅いっすよ~後から来た女子のヤツらが先生は何処だってうるさくて…」
「はははは…分かった、すぐ行くよ」
先生は俺の側からすり抜ける様にして扉へと向かい、振り向くと…
「ありがとな~木下。シャツのシミ大分取れたよ」
先生は何事も無かったかの様に笑顔でそう言うと、トイレを後にした。
「…はぁ…」
…なにやってんだよ…俺…
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