アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
36
-
それからは、学校から家に帰ると、いつもおふくろが
「おかえり諒ちゃん」と出迎えてくれた。
再婚するまでのおふくろは毎日遅くまで働いていて、俺が家に帰ってもいないことが当たり前だったから、最初は不思議な気持ちだった。
世にいう鍵っ子だったから、鍵を持つのが癖だったけど、ほとんど自分で開けることは無くなっていた。
そして、毎晩のように、遙さん…義姉さんが俺に「宿題を教えてあげるね!」と勝手に姉貴ぶっていたけど、それもまだ素直だった俺はなんだか嬉しかった。
家に賑やかさがある。冬は暗くなるのが早いから、塾帰りなんかは家に明かりがついてるだけで嬉しい。
全部今まで無かった温かさだった。
「今度の土日は健吾さんがお休みを取ってくれたから4人でお出かけができるわよ~~!」
なんて、嬉しそうなおふくろの声も今までは…
そんなこと考えると鼻の奥がツンとした。
その時は、水族館に行ったんだっけな。
もう中学生なのに。友達と行くからいい。
なんて反抗的な言葉は俺にはなくて
手を繋いだりはさすがに無かったけど、嬉しかった
「あれ何!いっぱい群れで動いてるよ!」
「あの魚は食べたことあるかな!?」
義姉さんはうきうきと回っていて
何故か食べたことがあるorないで見て回っていた
水族館をなんだと思っているんだあの人は…
と気づけば自然と笑ってくっついて行く俺がいた。
おふくろに変わって、休日は健吾さん…義父さんがタ飯を作ってくれることもあった。
義父さんの作ったチャーハンを食べたら、おふくろが作ったのよりおいしくて驚いたりもした。
シンプルな料理だけど、作る人で変わるもんだなぁ
なんて思いながら完食したのを覚えてる。
俺は、すぐこの家族は大切にしたいと思える人達になった。環境になった。
そして、おふくろを愛しそうに見つめる義父さん、
俺のことを本当の弟みたいに接してくれる義姉さん、
いつも幸せそうに笑うおふくろ。
俺にとって3人は“大切な宝物”になった。
このときの俺は、この幸せな日々が永遠に続くものだと信じていた。“大切な宝物”が壊れることなんてないと。
ところが、中学3年の春…。
“大切な宝物”が壊れはじめたのは、
優しい陽だまりが心地良い桜が舞う季節だった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
37 / 68