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「はぁ、高校始まったらだりぃなぁ」
義姉さんと義父さんが、暮らしている家はわかっている。
携帯電話の番号だって知っている。
だけど、会いたくても会えない。
連絡したくても、できない。
今さら合わす顔がない……というのが本音だ。
家族が元通りになるためには、俺が変わらなくてはならない。春は近くにまで来ている。新たなスタートを切るために、今度こそ俺は前を向くんだ。
窓を開けると、強い風が部屋に入ってきた。
いつか、すべてを取り戻せるように…。
そして、もう後悔しないよう生きられるように…。
そんな願いを、青い空を見上げながら心の中で眩いた。
高校生になって、自分の人生が変わるような出会いがあった。それが、充だった。
その日も、後悔ばかりだと嘆いて歩いていた日──
────────────────────────
『う~ん!"ウチ"では飼えないしなぁ…』
男なのに可愛く唸るやつがいるな、きもちわるっと思って路地裏をちらっと見たら、ハーフ、なんだろうか。
気持ち悪いなんて言葉が似つかないほど綺麗な男。
本当に男か?あれ、女じゃないのか、体が華奢すぎる。
どうやら捨て猫を撫でながら唸っているようだった。
『可愛いな、お前たち。兄弟か?姉妹か?仲良いなぁ』
静かに猫2匹の頭を撫でている綺麗なヤツ
見られてることに全く気がついていないみたいだ
『でも、白と黒なんて…まるで俺たちみたいだな。似てないじゃんか。名前くらい似せたいなぁ』
『そうだ、白の子は太陽のアポロンからとって、アポロ。黒の子は、月のアルテミスからとって、うーん、そのままアルテミスでいいかな。神の名前なんて大袈裟かな』
なんの神話だっけ、、、と呑気に盗み聞きしていた。
すると声は少し震えて、少し静かになった。
『ごめん、ごめんな、連れて帰れないのに名前なんか…』
泣いて、んのか…?
そいつの初めの印象はやっぱり"綺麗"だった。
高校が始まってすぐだったから、俺はそれがクラスメイトだと気づいたのは翌日だった。
猫を撫でていた時の雰囲気とは全然違って、笑いそうにない、無表情な、だけど美人だから、窓際の席が似合う。
短髪とは呼べない髪が靡くのが、こう、正直めちゃめちゃエロい。
俺はあれからその捨て猫に足を運んでいた。
実はずっと住んでいて、事情を知ってるマンションの管理人とは仲がいい。4人から、3人になってしまった俺の家族の時も大丈夫か?とよく気にかけてもらっていた。
その日、充を初めて見た日、その誰かもわからない美人が唸って撫でていた猫を飼いたいとお願いしていた。
もちろん初めは「お前だけ特別扱いは出来ないからダメだ」と一括されたが、頼むとお願いしまくった。
もうそれは本当に毎日。
やっと管理人さんが折れて、承諾が出て、猫を飼う準備ができるまで、と動物病院で預かってもらっている。
本当は預かって貰えないのだが、管理人さんの知り合いだという動物病院の先生。
この人も管理人も男なのだが、こう、動物病院の先生なんかエロいんだよなぁ。まぁ男に使う言葉ではないが。
あと妙に二人の仲がいいと言うか、近いというか。
そんなことより、早く、充を驚かせたいな。
────────────────────────
初めて充をみて、いつか会いたいと思った翌日の教室にいる姿を見てはガッツポーズをしそうになった。
猫の前での雰囲気とは似つかない無表情で美人な充
きっと俺のように何かを抱えているんだと思った。
初めて、この人を守りたいと思った。
初めて、人を愛する気持ちを知った。
初めて、母さんが健吾さんを愛したのも
健吾さんが、母さんを失って自暴自棄になったのも
初めて、愛しい人が出来て、知ることが出来た。
「──そんで、俺はひとり暮らしをしなきゃいけなくなったわけ」
親友の海斗にも話したことがない俺の過去を、偽の恋人という事になっている充に話した。
こいつなら、俺の過去を受け止めてくれる。
俺の心をわかってくれる。
勝手にそう思った。
充のことを信頼しているからなのか、充が自分の中で大きな存在だからなのかよくわからないけど、なぜかそう思ったんだ。
「泣いたら、いいと思う」
俺が話し終えたあと、充は俺のことを優しく抱きしめた。
そのとき俺は、愛しい人の応援はこんなに真に来るものなのだと思った。充が背中を押してくれたんだ。
過去から逃げて、ずっと立ち止まっている俺はもういない。変わるんだ。
朋るい未来を目指すために...。
俺は、気づいたら泣いていた。
人前では我慢していた涙を素直に流せたのは充のおかげ
ありがとな、充───…。
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