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52 憧れ
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side 須藤充
「なんでお前にこんな話しちまったんだろうな」
話し終えたとき、「ハハッ」と福田は笑っていた。
でも、その笑顔は寂しげで、今にも崩れてしまいそうで...。とても、乾いた笑い。
俺みたいになってほしくない。そう思った。
無理して笑わないで。
心の中では泣いているくせに強がらないで。
もしかしたら…福田は嫌がるかもだけど、きっと俺たちはとてもよく似ているのかもしれない。
心の底から笑顔を作れないところ。
他人の前では強がっちゃうところ。
ひとりぼっちで生きているところ。
お互い“住んでいる”世界は違うけど、確かにすごく似ている。ひとつ違うのは、福田がまだ生きていられるところ。やり直しがきくってところ。
ギュッ……と、気づいたら福田を強く抱きしめていた。
ベッドで上半身だけ起こしながら話してくれた背中に、俺は腕をまわして優しく抱きしめていた。
福田が持っていたマンガが、ポロ......とベッドに落ちて、福田が「充…?」と戸惑った声を出す。
「泣いたら、いいと思う」
「......は?」
「こういうときこそ、笑っちゃダメだと思う。泣いても、いいぜ。俺泣き顔を見る趣味なんてないから。安心して、、、な?」
ひとりになったことがある人ならわかる、“涙”がある。
『泣いてもいい』って、言って欲しかったんじゃねぇの?
俺も同じだから、なんとなくだけどわかる…。
「アホ。俺は泣かねぇ」
「嘘。鼻すすってんじゃん」
「これは……カゼが長引いているだけだっつ一の」
「ソーデスカ」
まだ強がっている福田だけど、俺の肩にポタポタと雫が落ちた。やっばり、泣いているじゃん。
素直になればいいのに。そう思って頭を優しく撫でた。
「俺なんかに優しくすんなよ」
「"俺なんか"じゃないだろ?俺は福田に憧れるよ」
「お前こそ嘘だろ」
「嘘じゃないって。俺は福田みたいに素直じゃないから」
俺は言うのが怖いんだ。
福田に嫌われたくない。そう思ってしまうんだよ。
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