アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
53
-
「あのさ、福田。俺福田のこと好きだよ?福田のまわりには「大好き」って思ってくれる人がいるだろ?「俺なんか」なんて言っちゃダメだ。」
俺のことを「大好き」って思ってくれる人なんていない。
だから、羨ましい。
「んだそれ……っ、俺の涙は…高いからな?」
「金取る気かよ~」
「はは……あ、りがとな」
泣いているせいか、福田の声は少し震えていた。
まったく。こいつも、苦労してきたんだろうなぁ。
「っ…(くっそ…腕の感覚なくなってくる…)」
抱きしめていた俺の腕の力は弱くなっていた。
ちゃんと強く抱きしめているはずなのに、それでも弱い。
タイムリミットが近づいている、怖い。
今は……今だけは……その怖さを克服できそうな気がするんだ。福田が近くにいるから、か。近づきすぎたかなぁ。
人の温もりって、こんなに温かいっけ。
いつ「さよなら」するのかわかんないけど、それまで隣にいれたらいいなぁ。
「で?」
「え、何」
「いつ仲直りすんの」
「はぁ?」
「そんだけ泣いたんだ、もう仲直りできるだろ?」
「お前、たまに妙に強気だよな…」
きっと俺は関係ない。でもどうせ"恋人"なんだ。言いたいこと言ってやれ。殴られはしないだろう。多分。流石に。
てかこんな体格いいやつに殴られたら生きてられん。
聞いてしまった、福田の辛い部分を聞いてしまったからには、お節介だと分かっていても俺の目がまだ見えるうちに福田の憑き物が落ちてほしい。
「明日…」
「なんて?」
「いや、お前が帰ったら、電話するよ。」
「なんで俺が帰ったらなんだよ」
「恥ずいんだよ、うっせーなぁ」
ま、そりゃそうか。散々泣いて、更に家族と電話するとこなんて、弱いとこ見られ続けたくないわな。
「わかった。じゃあ俺帰るな」
「おう」
「ちゃんと素直に話すんだぞ」
「お前は俺のおかんか…」
そんなたわいのない会話をしながら俺は福田の家を出た
福田が素直に向き合えたらいいなぁ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
54 / 68