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────放課後
屋上を出た俺は旧校舎の階段にいた。
ここなら誰もこねぇし、昼休みにご飯を取りに行く以外ではずっとここにいた。
ぼーっとしてるだけだったけど、暗くなりそうだからそろそろ帰るか。
あくびをしながらカバンを取りに教室へ向かった。まぁもう誰もいなかったけど。
机の横にかけてあるカバンをとって帰るべき場所へ帰る。あの狭くてさみしい真っ白な空間。
俺が帰るのはもう物心つく前から変わってない
いつもどうり帰ると迎えてくれるのはナースステーションにいる看護師さんたち。
「あ、お帰りなさい。充くん」
「おかえりみっちゃん!」
みっちゃんはやめてくれないかなぁ?
ちょっと恥ずかしいし
「うん。ただいま」
多分、学校に行っていいと許可が出たのは俺の残り時間があと、わずかだからだろう。
エレベーターに乗って4階に向かい、411号室に入る。
「……ただいま。」
返事も何もないけど、もう慣れたもんだ。
カバンをいつもの棚の上に置き、ベッドのまわりを囲むようにカーテンを閉める。
そして制服からシンプルな緑っぽい色のパジャマに着替える。
────そう、ここは病院。
俺はもう記憶が残っていない頃、つまり物心つく前からずっとここにいる。中学校までは病院の隣にある支援学校に通っていた。
だから高校生になるまでこの空間からソトへ出たことがなかったんだ。
俺一人しかいない部屋は真っ白な箱でしかない。静かで、冷たくて、さみしい。それでも薬を毎日飲んだり、検査も色々したり、リハビリだって頑張ってきた。
けど、もうやるだけ無駄みたいだ。
しかし意外と病気の進行は遅くて、俺の「高校だけはみんなと同じように普通に通いたい」この、最後の願いだけは聞き入れてもらって、今は普通科の高校に特別通わせてもらってる。
もちろん、家族も毎日見舞いに来てくれていた。
と言っても両親は交通事故で早くに亡くなっている。そのため母の兄である、親戚の叔母や叔父の家で俺達はお世話になっていた。
しかし、歳をとるにつれてここに来るのが大変そうだった。だから中学二年生のころ、俺から突き放した。
「無理して、もう来なくていいから」
そういった時の悲しそうな顔は忘れられないだろうなぁ。でも、もう歳なんだ。それに『俺はどうせ死ぬだろ?』
そう思ってしまうと、全てがどうでも良くなった。叔父さんたちには自分の健康を第一に考えて欲しかったし。俺の事で迷惑はかけたくなかった。
突き放したのは俺なのに何言ってんだって感じだけどさ。正直、来なくなってからは寂しかったなぁ。
あ、あと俺には二つしたの弟がいるんだ!
名前は須藤 悠里(スドウユウリ)
もうほんと可愛くてさ。
あ"?ブラコン?そうですけどなにか?
ゴホンッ。んでまぁ、小さい頃弟も弟なりに俺を励ましてくれていた。毎日毎日、一生懸命。
叔母さんや叔父さんに「来なくていい」って言った時は丁度土曜日の弟が部活に行っている間のことで、弟はその時いなかった。
だから、その次の日、悠里にすごく怒られたんだ。
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