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ガチャッ
「やっと来た。」
俺が部屋に入ると福田はそう言って見ていたテレビをプツンと消し、身体を起こした。
「お待たせしましたぁ」
笑いかけたかったけど、多分、笑えないだろうから少し俯きながら言った。お盆を部屋にある小さなテーブルの上に置いた。
「…?なんか、お前、顔」
「?なに?」
「いや、なんでも。」
泣いたこと、バレるかな。気にしないでいてほしいけど。
何でもってことは気が付かなかったのかな
髪を長くしておいてよかった。邪魔だけど今回は助かる
俺はそう思い、ごまかすのも兼ねて福田に尋ねてみた
「食べさせた方がいい?」
よく、ドラマなんかは「あーん」ってしてるのを見かける
「子供扱いすんなタコ」
ムカッ、人が気遣ったのに!
「悪口混ぜるなよボケ」
口をムッとさせながら俺は言い返す。
「お前こそ悪口だろそれ」
福田は笑いながらそういい、ベッドから降りてテーブルの前に座る。
ごめんな。笑えなくて。笑い合えなくて。
笑い方、もう忘れちゃった...。何年、笑ってないだろう?
いつか、福田と笑えたらいいなぁ。
────────────なんで、そう思う?
え?あ、確かに...なんでだろう?
ふと自分でなぜ?と気になった
いつからか、心から笑うことがなくなってた。仮に笑ったとしても苦笑いとかそんな感じ。どうして忘れたんだろう。なんで笑えないんだろう。
今はこんなにも笑いたいのに...
笑顔になれない自分にイライラした。
「お、うめぇじゃん」
そんなことを考えている俺を知らず、いつの間にか食べ始めていたらしい。
俺は不安だったので「本当?」と聞き返した。
「ほんとだよ。お世辞じゃなくて、ちゃんとうめぇよ」
笑顔でそう言い返してくる福田は普通のことを言っただけなんだろうけど、俺にはとても嬉しい言葉だった。
初めて作った料理を食べてくれた。美味しいと言ってくれた。心の中を暖かい気持ちが包んだ。
この気持ち、初めてだ。なんだこれ?
結局、福田が食べ終えるまで考えたが、答えは出なかった。
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