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病院へ近づいていく帰り道を辿りながら俺は思わず涙を流してしまった。こんな弱気ではいけないと溢れる涙を抑えながら病院に帰り、411号室へ向かう。
「あーぁ。また独りだな」
思わずぼそっと呟いてしまった。さっきまで福田と一緒にいたせいなのか、この部屋が寂しく感じてしまう。着替えを済ませてベッドに腰掛けると、さっき抑えた涙が溢れ出てしまった。
「大丈夫?」
大丈夫じゃないから"ここ"に居るんだ。
「無理しないでね?」
無理しなくちゃ俺は死ぬんだ。
「そばに居るから」
…そんなこと、言われてみたいよ。
俺には、誰も、居ないんだな。
「はは、グズッ、止まんねぇや。」
看護師さんは仕事だから「頑張って」と励ましてくれる。でも、俺は何を頑張ればいい?なんて、言えるわけがなくて
手術もできないまま薬だけが増えていって。
「充くんって、心が無い子みたいよね」
なんて看護師がこそこそ話してるのを聞いたことがある。殆どが優しくしてくれるが、同情からだったりする看護師が多い。当たり前といえば当たり前なんだが。
それを聞いた時俺は思ったんだ
充「なら、生きたいと喚けばいいのかな」
くだらない、くだらない、くだらない!
喚いたところで、泣き叫んだ所で未来は変わらないのに!
運命はそう簡単に変わらない。
俺は、独りでずっと戦ってきたんだ。
なのに、福田なんかと"遊ぶ"から。
友達も恋人も家族さえも、俺を要らないはずなのに
「生きづらい、なんて。初めて思った」
変化に、ついていけない。でも本当は望んでたんだと思う。一人で平気だと思ってたのに、本当はずっと待ってた。俺のために会いに来てくれる人や、俺のために動いてくれる人。俺のために一生懸命になってくれる人。
そして、やっと見つけた。
福田っていう偽の彼氏。偽りだって構わない。そばにいてくれる、会話をしてくれる。それだけで充分嬉しかった。
なぁ、神様。相変わらず神がいるかすら俺にはわからないが、世間一般からしたら恐らく小さすぎるこの嬉しさに俺は幸せという名前をつけたい。
白い世界にいることに変わりはないが、普通の高校に通って、外の世界が見えてきて、俺は『もっと』外を見たくなった。知りたくなった。
「ありえない、話、だな。ははっ」
もう乾いた笑いしか出ない。涙が、止まらない。
また福田に会えば、少しは笑顔っぽくなれるだろうか。
叶いもしない願いを俺は心の中で唱え続ける。
「……生きていたい。まだ、生きたいッ!」
声にならないまま涙だけが溢れた
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