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風呂から上がると、いつの間にかニュースに切り替わったらしく、テレビから聞こえてくるアナウンサーの声の中、ソファーで規則正しい寝息を立てる結斗さんを見つけた。
部屋着としている大きめのTシャツにハーフパンツを身に纏い、濡れた髪をタオルで拭いながら結斗さんに近づいた。
「…兄さん、起きて、風邪ひくよ?」
声をかけても「んん…」と吐息混じりの声が返ってくるだけだった。
「兄さんっ、起きないとお姫様抱っこして布団まで連れて行くよ?」
僕が寝てる間にやられて1番恥ずかしかった事を脅しに起こそうと考えた。
もちろん、相手は深夜に仕事から帰ってきた父だったのだが、中学生と言う難しい年頃の息子を軽々と持ち上げて
ベッドまで連れて行こうとしたのだ。
途中で起きた思春期の息子が小さなプライドをボロボロにされた羞恥に顔を歪ませながら蹴りをかましたのは言うまでもない。
「…ん、はるか…」
?
さっき言っていた彼女の名前だろうか…。
結斗さんは寝てるものの、仰向けになって両手を広げ
「抱っこして」のポーズでそれを呟いている。
「え、兄さんの彼女どんな力持ちなの…」
こうして寝ながらも抱っこを求めるという事は、無意識にしてしまう程、日頃からしている習慣的な物なのだろう。
「…んー、はるか…まだ…?」
いつもの結斗さんからは全く感じられない甘えた声。
なぜか顔が熱くなるのを感じる。
両手を広げたまま待機している結斗さんが腕が疲れた様子で顔を歪めて催促するので仕方なく僕はお姫様抱っこをして結斗さんの部屋へ連れて行く事にした。
「よっと、」
流石に自分より大きい結斗さんを持ち上げるのは、難しいかな、と思ったのだが、見た目によらず腰が細く、体重もおそらく僕と同じくらいか、それよりも軽い。
(僕も平均よりだいぶ軽いと言われている。)
なんとか持ち上がり、一階にあるリビングから2階にある結斗さんの部屋まで運ぶ。
2人分の体重を一度にかけられる階段はギシリと音を立てて軋む。
結斗さんの部屋の前に着き、脚を支えている方の腕をそのまま軽く上げ、ドアノブに手をかけた。
引っ越しの荷物がまだ片付け終わっていない様子の部屋に出しっ放しになっていた布団を見つけ、そこに結斗さんを降ろした瞬間。
「うへっ?」
グイッと急に腕を掴まれ間抜けた声が漏れてしまう。
…
驚きで理解に時間をかけたが、布団の上にスヤスヤと眠る結斗さん。
引っ張られた形になり握られたままの僕の腕。
そして、倒れかかって結斗さんの肩を挟んでつん這った両手。
湿った僕の髪が結斗さんの顔を掠める。
僕は今、今日観た番組に出たアイドルの様に結斗さんを押し倒す形になってしまっていた。
焦って体勢を起こそうとするが腕ががっしりと掴まれていてそれを許さない。
「ンッ……?
っっっ?????」
体勢を起こそうとした拍子に結斗さんも引っ張ってしまい、その衝撃で目を覚ました結斗さんは飛び跳ねるようにして喫驚した。
「どどどど?
え?かえ、で ??」
「待って??動転したいのは僕の方だからっ! 」
2人であわあわしながら、僕は結斗さんから握られた腕をブンブンと振った。
「あ…!ご、ごめん!俺が、掴んじゃったのか…!」
なんとか変な誤解をせずに理解してくれたようで、ホッと胸を撫で下ろす。
…ん?変な誤解ってなんだ…??
「大丈夫!兄さん軽いのに力強いんだね?
びっくりしたよ!」
申し訳なさそうに眉を下げる結斗さんに、この空気を明るいものにしようと早口に思った事を言う。
「…え?軽い?」
「あ、さっきソファーで寝てたから僕が部屋まで
運んできたんだよ」
「っ!!!?!
重かっただろ?
か、楓の方こそ見た目の割に力持ちなんだね?」
「軽いって言ったばっかりだろ?」
見た目の割に、という所がすこし気になったが
焦ったのか、いつもより饒舌な結斗さんを見て笑みがこぼれた。
「…」
突然黙り込む結斗さんに何か悪い事を言ったのかと
不安になり顔を覗いた。
しかし、結斗さんの表情は怒ったようなものではなく
只々、僕の顔を見てポカンと口を開けていた。
「兄さん?」
どうしたのだろう、と気になり声をかけると
ハッとしたよにいつもの無表情に戻ってしまった。
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