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嫉妬と羨望9
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(熊谷先生語り)
「この音楽は先生の趣味なの?このバンド、俺も好き。へぇ意外だな。ニューアルバムは入ってる?」
「入ってるはずだけど。これじゃないかな。」
「本当だ。3曲目が好きでいつもリピートしてるんだ。名曲だよね。」
確か葵も同じことを言っていた気がする。
助手席に乗った神田は、さっきまで泣いていたくせにケロっとして、車の中を詮索していた。音楽は勿論葵の趣味だし、ティッシュカバーも、助手席にあるクッションも全て葵が買ってきて勝手に置いている。だからあまり触らないで欲しいのだが、可愛いだの、もしかして彼女の趣味でしょ、だの神田は煩い。
「さっきの襲われた相手って3年か?いじめとかじゃないよな。嫌なこととかされてたら俺に言えよ。力になるから。」
あんな泣き方をされたら心配になる。生徒指導としては、聴取したいところだ。
場合によっては強姦未遂になるだろうし。
「違う。3年じゃない。」
「じゃあ2年……まさか1年か?」
「…………違う。あんまり大ごとにしたくないから、他人には言わないで。熊谷先生だけだよ。時田って知ってる?そいつにやられた。あのメガネデブに。」
メガネデブ……俺は絶句してしばらく言葉を失った。
「社会の時田先生か。」
「そう。なんかね、放課後によく補習してもらってて、やたらと何かにつけて近いし、触ってくるから、おかしいと思ったんだよね。全力で拒否したから、もう呼ばれないと思うけど。あいつは変態オヤジだ。気持ち悪い。あー思い出した。キモっ。」
ぶーぶー口を尖らせて、時田の悪口を言っていた。なんとなく神田が歩んでいる道が葵に似たり寄ったりで他人事とは思えなかった。
しかし、時田先生は俺と同い年だぞ。神田からしてみればオヤジなんだと、少し悲しくなった。
奴の家は、caféRの近所だったため、いつも停めているコインパーキングで奴を降ろし、そこで別れた。
神田の件は、学校で考えようか。拒否したことにより嫌がらせとか無いといいのだが。
いや、あの時田先生が生徒を見境なく襲うとは意外だな。しかもそれ目的で補習してたとか、陰湿でやることが汚いし、確かにキモい。
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少し歩くと、caféRのオレンジ色の灯りが見えてきた。正面から行く勇気が無かったので、サイドにある小さな小窓から覗いたら、すぐに葵を見付けることが出来た。
今日はいつもより混んでいるようで、色々と忙しなく店内を動いている。
久しぶりに見る葵は、やっぱり可愛い。見ていると安心するし、癒される。早く連れて帰りたくなった。
もはや俺の身体の一部みたいなもので、居ないと落ち着かないし、生きた心地がしない。
邪魔をしてはいけないから、バイトが終わるまで外で待っていよう。何て言って謝ろうか。こういう時は素直に謝意を伝えるのが1番かな。
「ちょっと、変態教師。こんな所で何してんの。そこにいるガキはなんなの。新しい恋人でも見せつけに来たとか。」
1人で考え込んでいたので気が付かなかったが、いつの間にか、島田が俺のそばで仁王立ちをしていた。何故か表情が固く、顔が怖い。
「ねえ、島田、魔王ってどこにある………あ、先生………」
外に出た島田を追って運悪く葵も外に出てきた。一瞬明るくなった表情が一気に暗くなる。何事かと思って背後を振り返ると、さっき別れた筈の神田が近距離で俺の服の裾を引っ張って立っていた。
何故神田が戻ってきて、俺の後ろにいるのか、さっぱり分からない。
そして2人の冷たい視線は、殺気を感じて咄嗟に俺の背後に隠れた神田に集中していた。
※魔王とは焼酎の銘柄です。
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