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そうだ京都へ行こう2
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(熊谷先生語り)
頭の中に天秤があって、ゆらゆらと揺れている。
左は、葵が松山と2人で京都に行くことへの不快感。下心丸出しの松山が葵に何をするか分からない。自分の大切なものを変な奴に汚されるのは絶対嫌だ。
主に自分のエゴから来る気持ちだと思われる。
右は、葵に嫌われることへの恐怖だ。行くことを反対して、再び出て行かれたら今度こそ再起不能になる。
同じことを2度繰り返したら次は無いと、小さい子でも知っているだろう。
こちらは葵への依存心から来る気持ちだ。
グラグラと揺れては傾きを繰り返し、どちらにするか決められないでいた。
要するに、京都行きを認めるか、認めないかで悩んでいた。
こういうもやもやが発生した場合は、野田しかいない。昼間に連絡をしたら、快い返事を貰ったので、奴に聞いてもらうことにした。
いい年して若い恋人のことで悩んでいるとか、大学時代からの長い付き合いの友人にしか打ち明けられない。
話を聞いた野田は、珍しく俺の肩を持った。葵とのことは、古い友人はこいつしか知らない。
「それさ、祐樹が許したら、松山が許可を貰ったと思って絶対に手を出してくるだろうよ。葵君って年上にモテるのなー。分からないこともないけど。ちなみに、女の子は聞いたことないの?」
女子については聞いたことが無い。高校の時クラスメイトからチョコレートを貰ったぐらいか。
「女子は聞かない。野郎ばっかだ。結局京都行きを許可するしかないと俺は思うんだよ。今はそっちに傾きかけてる。だけど、松山が葵をやらしい目で見るのとか勘弁してほしいし、万が一襲われたりしたら……と考えると行って欲しくない。本音は行くなって言いたい。」
本当は外に出て行かないよう、どこかに閉じ込めておきたい。
「そしたら、また嫌われるぞ。〝先生、大嫌い〟か。葵君も決め台詞を作ったな。20歳になったんだし、ちょっと行かせてみれば?自分の身は自分で守らないと、四六時中祐樹が一緒にいる訳ではないだろうし、何かあったら駆け付ければいいじゃないか。」
「おい、京都だぞ。軽く言ってるけど、どこだと思ってんの。遠すぎる。幾ら何でもついて行くとか、ストーカーみたいな重いことはやりたくないし。俺の価値観が崩れてしまう。そんな彼氏は普通に考えても嫌だ。」
思い浮かべただけで自分が引く。そこまでやったら人として何か境界線を越えてしまいそうだ。
突然、野田が何かいいことを思いついたように目をキラキラさせて話し出した。
嫌な予感がする。
「よし、祐樹。じゃあ、俺が京都に行く。旅行代理店に勤めている俺が、現地へどうしても視察に行かないといけなくなり、1人で寂しいから、たまたま休みのお前をお供に京都へ行くことにする。だったら少しは安心するだろう。」
「は?野田と俺が?なんでだよ。お前が行っても何の得にもならないだろう。」
「好奇心が6割、葵君のためが4割かな。」
俺のためではないのかよ。
野田は追加できた生ビールを一気に飲み干した。こじつけのような気がするのは俺だけだろうか。
「でさ、うまくいって、葵君の貞操が守られた女の子紹介してね。年上でもいいから。」
結局はそれが目的なんだろう。
野田は未だに彼女がいないから結婚もできない。いい奴なんだけどな。
まあ、結婚できてないのは俺も同じだ。
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