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そうだ京都へ行こう3
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(熊谷先生語り)
段々野田が乗り気になっていき、上司に電話で確認をして出張扱いにまでしていた。
そこまでする必要があるのか、俺も不安になってくる。要は葵を信用すればいい問題だけの気がするのだが。
「よし、葵君とは偶然を装って、現地で合流しよう。行きは別々だけど、帰りは彼だけでも回収して帰るとして、朝は何時の新幹線に乗るのかな。出発はその後だ。」
「そこまで決めてもらって悪いけどさ……やっぱり葵に任せようかと。」
野田の目が悪そうに光った。
「葵君が襲われてからでは遅いんだよ。祐樹の大切な恋人が松山の思い通りに弄ばれたらどうすんの。先生〜って泣きながら叫んでたら可哀想だよ。俺は彼を助けたいね。」
それは可哀想だけど。俺のものに勝手に触れられるのは嫌だけど。
「祐樹は、葵君がどこを回るか聞いといて。俺たちは、それなりに行く所を決めておくから。車は祐樹が出して、運転は交代でやろう。なんか楽しくなってきた。ツアー組んでるみたい。最近、企画から遠ざかってて、つまんなかったんだよ。」
「………じゃあお前に任せるよ。」
悪い予感しかしなかったのだが、もう行く気でいる野田を止めるのは不可能だったし、俺もまんざらでは無かった。
奴に流されて、行ってみることにした。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-==-=-=-=-=-=-=-=-=-=
「おかえりなさい。」
次の日、仕事から帰ると葵が待っていた。
玄関まで出てきて抱きついてくる。柔らかい髪の毛が鼻をくすぐり、いつも通りに癒されて、一気に仕事の疲れが吹っ飛ぶ。抱き返すと嬉しそうに俺の匂いを嗅いで甘えていた。
小動物みたいで可愛い。
「お腹すいたでしょ。ご飯食べよう。今日はハヤシライスにしたよ。牛肉が安かったから。あとね、キャベツも安かったんだ。明日はロールキャベツにしようかな。先生が好きな和風のやつ。」
家じゅうに美味しい匂いが広がっている。
大体葵が夜来る時は、夕飯を作って待っている。洗濯物も畳んである。それを野田に話したら『新妻だな』と言われたのを思い出した。新妻は青いギンガムチェックのエプロンを翻し、食事の準備を始める。
これで襲ったらまた怒られるだろうな。
後ろ姿にムラッと来るんだけど……
「葵、京都へ行っておいで。視察の邪魔にならないように、楽しんで来たらいいよ。」
鞄を置いて携帯を充電しながら話しかけると、冷蔵庫からサラダを出していた葵の動きが止まった。
「行ってもいいの?怒らない?」
こちらをくりっとした目が見ている。そんな顔をされたら、怒るどころかキスしたくなるじゃないか。
「怒らないよ。但し、1日の予定は教えて欲しい。心配だからね。松山にはくれぐれも注意しろよ。」
他にも言いたいことは山程あるが、ここは理解のある恋人を演じようとぐっと堪える。
俺は寛大な彼氏だと自分に言い聞かせ、声のトーンをいつもと変わらないように落ち着かせた。
「分かった。注意する。先生、ありがとう。お土産いっぱい買ってくるね。」
そう言って満面の笑みを浮かべる葵には、俺はめっぽう弱いのだった。
間も無く食事の準備ができて、ダイニングデーブルに向かい合わせで座り、いただきますをした。
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