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青春狂走曲2
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(神田紘斗語り)
今日ほど制服姿の自分が幼く思えたことはない。キュッとズボンを握りしめた。
俺より3歳年上の葵さんは、縞々で大き目のシャツにジーンズを履いていた。裾はちょっと控えめに折られていて、黄色のコンバースと足元にはアンクレットが光っている。アンクレットなんて俺の高校では見たことがない。
大学生は全てが余裕で格好良く見えた。
葵さんは突然押しかけたにもかかわらず、バイト先のカフェに俺を通してくれた。
店長さんらしき眼鏡のイケメンに了解を得たようだ。ここは何だか魅力的な人の集まりのように思える。葵さんと一緒に歩いていた人も、口は悪そうだったが綺麗な人だった。
場違いな自分にめげそうになりながら、折角葵さんに会いに来たんだからと心を奮い立たせた。ここに来るまでも相当な勇気を出したのだ。無駄にはできない。
「はい、どうぞ。お砂糖はこれ。好みで入れてね。」
マグカップに入った温かいカフェオレが目の前に出された。
「ありがとうございます。」
白と茶で迷ったが、茶色い角砂糖を1個入れ、スプーンでぐるぐると掻き混ぜた。
あっという間に角砂糖は底に沈んで行き、姿形が見えなくなる。
「相談って何かな?先生……熊谷先生のことなら無理だからね。」
柔らかい長めの髪の毛がさらりと流れ、嗅いだことのない甘い匂いが鼻をくすぐった。
香水でもなく……シャンプーや柔軟剤でもない。何の匂いかな。いい香りだ。
隣に座った葵さんに、再び目を奪われそうになった。そんなことより目的を果たそうと気合いを入れる。
「違います。あ、あの不躾なお願いですが、年上の人に振り向いてもらうにはどうしたらいいのか、教えもらえませんか?」
頭の中で繰り返していたお願いを思い切って話した。
みんながスタッフルームと呼んでいたこの部屋が、しいんと更に静かになる。元々他には誰もいないけど、深い静けさに包まれた。
「えっ……何?質問の意味は分かるけど、意図が読めない。順番に説明して欲しいな。」
葵さんが複雑な顔をしてこちらを向いた。
「俺……熊谷先生にはフラれたし、キモい先生にしか好かれなくて悩んでたんです。そしたら、優しくしてくれる事務員さんが居て、その人とどうしても仲良くなりたくて。
でも、俺より10歳くらい年上だし、時々話すくらいで全然進展がないから……葵さんって魔性なんですよね?先生を何人も手玉に取ったって熊谷先生から聞きました。どうか俺にオトコを落とす方法を教えてくださいっ。」
一息で言うと酸素が足りなくなり苦しくなって、はあはあと息が荒くなった。
「神田君は相変わらずよく喋るね。先生を何人も……とか熊谷先生が言ってたの?」
「直接言われた訳じゃないですけど、熊谷先生の話を総合して判断しました。そうなんですよね?」
それを聞いた葵さんがお腹を抱えて笑い始める。その光景があまりに清々しくて俺は呆気に取られた。
そうか。年上を虜にするには、まずは笑い方にあると見た。気取らずに感情の赴くまま笑うんだと、頭の中の攻略法に加えた。
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