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青春狂走曲4
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(神田紘斗語り)
牧村さんはうちの高校で事務員をやっているうちの1人だ。事務員さんは4人いて、あとはオジさんやオバさんばかりだから、余計に目立つ。女子にも密かにファンがいるみたいで、競争率は予想以上に高いと思う。
それに俺は男だし、牧村さんにしてみれば、ただのガキにしか見えないだろう。
生徒には目もくれず、我が道を行く姿は格好いいと思う。俺が彼を好きな理由の1つだ。
「昨日、印刷室で作業をしていたら社会科の時田先生が来て、神田君いませんかー、って探してたけど。お前、ホモ時田に狙われてるぞ。」
座っている俺の横で、牧村さんはヤンキー座りでしゃがみ込み、ふぅーっと天に煙を吐いた。校舎の境目は日光が当たらず、湿気が多いから誰も来ない。隠れるには最適の場所なのだ。目を落とすと神田さんが履いている濃紺のクロックスが見えた。
「分かってますけど、逃げることしかできないんです。牧村さんが守ってくださいよ。」
「は?なんでだよ。そういうのは先生に頼め。生徒指導の熊谷さんとかいいじゃん。あの人は面倒見が良さそうだし。俺はただの事務員だから、特定の生徒とは仲良くできない決まりなの。めんどくせーし。」
ですよね、と思いながら自作のお弁当を口に運んだ。俺は父さんと2人暮らしの為、自分でほぼ家の事をしている。最近はパンに飽きたので弁当を作るようにしていた。そして今日の放課後は、少し離れた所に住むばあちゃんの様子を見に行く予定だ。ばあちゃんは元気だけど、足が悪いから重い買い物は俺がやる。
「どうしたらいいのかな。逃げるしか考えつかないし……牧村さんの側にいてもいいですか?先生達は頼りにならないんです。助けてください。牧村さん……」
頭の中で葵さんはこんな感じかな、と思って
葵さん風に上目遣いをやってみた。
牧村さんはこちらを一瞥した後、吐き捨てるように言った。
「なんだよ、その顔が気持ち悪い。何かと間違えていないか。野郎がやっても不快なだけだ。女子高生を連れて来たら考えてやってもいいよ。この学校には俺の好みの女子はいないけど。ブスばっかだし。ははは。」
牧村さんの笑い声を聞きながら作戦の失敗を悟った。練っていた色々な方法が試さないまま消える。
彼は見た目は真面目な感じに見えても、口は物凄く悪い。確かに可愛い女子高生は少ないけどさ、それなりのレベルならいるよ。牧村さんの欲するレベルは高いらしい。
「とにかく、昼休みはここにいることを内緒にしてやるから、頑張れよ。男のコだから身体を張れば何とかなるっしょ。」
頭を無造作に撫でられた。なんか違うけど、触れ合えたことに喜びを感じる。
でもね、デブ時田に身体を張ったらたぶん犯されてしまう。考え方がガテン系だなあ。
高校内は全館禁煙なので、牧村さんもルール違反のくせに危機感が全く無い。
「牧村さんはいくつですか?」
「俺?25だけど。あ、何?」
タバコを咥えてこちらを睨む牧村さんは怖かった。三白眼が更に不機嫌を誘っている。
この人、絶対元ヤンだ。
「なんでもないです。スミマセン。」
俺とこの人とは歳の差以上の距離がある。何とも切なくなりながら、食事を続けた。
こうして牧村さんとは進展どころか後退してしまい、落胆したまま昼休みは終わった。もやもやした気持ちを葵さんに聞いてもらおうか。昨日、いつでも相談していいよと、連絡先を教えてもらっていたのだ。
夜はバイトも無いみたいだし、電話しよう。
葵さんなら何か名案を授けてくれるかもしれないと思った。
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