アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
青春狂走曲7
-
(葵語り)
あ、悪夢だ。最悪すぎて出る言葉もない。
やっぱり来ない方が良かった。
じゃれる先生達を横目で交わし、神田君のクラスへ移動した。
神田君のクラスは話の通りで、高校生の割には本格的なカフェをやっていた。男子も女子もカフェエプロンを付けて仲良く給仕をやっている。よくありがちな男子がメイドの格好をさせられて嫌々やる模擬店よりは、見ていても感じが良かった。
アイスカフェラテを注文して席に着く。神田君は少しクラスメイトと話をして同じ席に着いた。思ったよりクラスに馴染んでそうで安心した。俺が心配することでもないけど、いつも友達がいないと言っていたから。
「葵君、本当に気にしてないの?いつもより元気が無いように感じるよ。嫌ならすぐ帰ろう。僕と買い物でも行って、お揃いの服を買おうよ。」
「平気だって言ったじゃん。そんな小さいことで悩んだりしないから。それよりパンケーキ食べたくない?ホイップ増し増しにできるって。うまそ。」
そう言えば、お腹も空いてきた。甘いものが食べたい。
「本当に甘いものが好きだねぇ。僕はパス。見てるだけでいいや。クリームを少しだけちょうだい。」
パンケーキも注文して、来るのを待っていると、間も無く女の子が運んできてくれた。店内が混雑しているため、背の小さい女の子が1人で重そうにヨロヨロしている。
普段飲食店で働いた経験が無い人が運んではいけない量の気がした。思わず身体が先に動いてしまう。助けようと駆け寄った時と、彼女がバランスを崩したのは同時だった。
島田は一歩遅れて俺の後ろにいたので、何も無かった。
甚大な被害があったのは、俺だ。
三人分の飲み物と、俺と神田君のパンケーキが降ってきた。ご丁寧にガラスのコップを使用しているので、ゴチンと頭に当たる。
パンケーキはほんのり温かい。食べたら美味しかっただろうに。残念だ。
「っ痛ってぇ……ううぅ。」
ずぶ濡れでその場にうずくまると、その場が騒然となった。ざわさわとして俺に注目が集まっている。
「大丈夫ですか?ごめんなさい。どうしよう………」
「葵君っ、大丈夫?ぶほっ。すごいよ。」
島田がすぐに駆け寄ってきて俺の様子を見た後、笑いながら言った。
くそー、後で絶対に仕返ししてやる。
その後、たまたま居合わせた担任の瀬戸先生の計らいにより、保健室で替えの服を貸してもらった。濡れた身体を拭き、タンコブが出来た頭を冷やしていた。
この服じゃ帰れないから、結局先生に頼るしかない。他に服が無かったんだろうか。学校指定ジャージとかでもよかったのに。
LINEで先生に要件を伝えると、一体どこにいたんだよって思うくらい直ぐにやってきた。しかも走ってきたみたいで、息が切れている。
「葵っ、びっくりした。なんでここにいる?しかも……その格好は俺に犯罪をさせようとしているとしか思えないよ。可愛い。可愛すぎる。新手のコスプレだろうか。いや、コスプレというか……とにかく似合ってる。」
「だめっ、触るなよ。」
伸ばされた手を咄嗟に払いのけた。『早く着替えて帰りたい』という要望をこの人に叶えてもらうには相当時間がかかることを悟る。
そう、俺は南高の制服を借りていた。白いカッターシャツに濃紺のスラックス、グレーのカーディガンを羽織っていた。
我ながら高校生に見えなくもないと思った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
51 / 161