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青春狂走曲10
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(真理語り)
「ちょっと待ってよ。いくら何でも教師だからって酷くない?僕は神田君の遠縁の親戚で、神田君に久々に会ったの。せめて今日じゃなくても明日でも明後日でも時間があるでしょうよ。理由も説明せずに連れてくとか非常識だと思うけど。」
2人の前に回り込んで、どうしてこんなに汗を掻いているのか分からない太った男に反論をした。咄嗟の思つきで言ったので、冷静な頭で聞いたら矛盾だらけの内容も奴には充分過ぎるくらい効いたようだ。思った通り焦りだし、更に顔を濡らしていた。ハンカチを出して拭いている。
「え、あ、理由………?神田が不真面目だからですよ。成績が芳しくない。とくに社会科の世界史は散々ですから。これから補習と説教です。」
文化祭の今から補習?
無いだろう。神田もあり得ない教師に好かれたもんだ。これがイケメンなら流されても絵になるのに。
「島田さん………助けて。」
身動きが取れない神田が縋るような目で僕を見た。この先生もかなり必死だ。相当な執着心のある彼を早々に解放するとは思えなかった。
僕は携帯を出して、熊谷先生にヘルプの電話をする。だけど何コールしても出ない。続いて葵君も同じくだった。きっと学校内でいちゃいちゃしているに違いない。逆にあいつらを説教して欲しいくらいだ。使えないエロ教師がここにもいる。
この学校には恩とか何もない。卒業生でもないし、別に騒ぎを起こしても自分には関係ない。僕は息を吸い込み、普段出したことのない大声に備えて、お腹に力をグッと入れる。
「本気で嫌がってるじゃないですかぁー、誰かー、神田君がたいへんっ。変態教師ー!!デブのちかんー、たすけてー、やめてーー」
ありったけの大声で棒読みした。喧騒が一瞬しいんとなって、音の代わりに視線が一気に僕達に注がれる。
大声を出すと気持ちが良い。今度彗さんとエッチする時にも出してみようかな。ふふふ。
「………時田先生っ、どうしました?」
「いや、あの………」
時田先生……がギョッとした顔で僕を見た。大声に気付いた別の先生が数名寄ってくる。
遠巻きにギャラリーが増えて行く。
しめた、と思った僕はデブを置いて、神田の手を取って走り出した。
「あ、こら、待てって。お前らっ……」
そんなこと言われて待つ訳がないでしょ。
追いかけてくるような気配だったが、人に紛れて思いっきり走った。
「はあ、はあ、はあ、島田さん、どこまで行くんですか?」
「分かんない。どこか隠れるところ無い?」
まるで高校生に戻ったみたいに心がワクワクした。僕の高校時代の前半は荒んでいたので、こんな楽しいことは無かった。葵君に出会って、色が付いたように世界が変わって見えたんだ。だから、葵君は何があっても僕の特別だ。
騒ぎが収まるまでは隠れていた方が良さそうだ。だけど、来賓用スリッパは滑ったりして走りにくいから、早く落ち着きたいと思っていた。
「じゃあ、こっち来てください。」
神田に案内されたのは校舎と校舎の間で、年中日が当たらないようなジメジメとした、暗い場所だった。ここだけ気温が低い。しかも先客が居た。タバコの煙がプカプカと空に溶けていくのが見える。あ、噂の牧村さん。
「…………神田、みんなが探してたぞ。何やったの?一躍有名人じゃん。隣にいるのは珍しく友達………あ、もしかして…」
「亮太さん、お久しぶりです。真理です。相変わらずガラが悪いですね。兄ちゃんに言いますよ……冗談ですけど。」
ヤンキー座りをしていた亮太さんが座り直しタバコを消した。兄ちゃんの名前を出すとすぐ態度が変わることに、我が兄の凄さを感じる。
そして、思いがけない想い人の登場に神田は目がキラキラしていた。
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