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素晴らしき日常7
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(島田語り)
「あっ、それって雅さんじゃない?ちょっと見せてよっ。……やっぱり……モデルやってんだ……」
「島田、止めろって。俺が見てんのに……え、ミヤビ……?」
思わず東雲から雑誌を取り上げて、裏表紙を凝視する。中性的な雰囲気の広告だけど、間違いなく雅さんだ。形の良いアーモンド型の目は覚えている。あの時、まだ葵君とも仲良くなる前に、セフレからドタキャンされて、ハッテン場の公園でウロウロしていた僕を見つけてくれたんだ。
思い出に浸っていると、横から葵君が覗き込んできた。ふわりと甘い香りがして、一瞬擦り寄りたくなったが、今は雅さんの話の途中だった……と我に返る。
「この人、島田の知り合い?最近、CMでも話題になっている人みたいだよ。見たことない?」
葵君が僕に聞いてきた。時事的な話題に疎い葵君でも知ってるらしい。
「あんまりテレビを見ないから話題になってるのは知らなかった。でも、この人には会ったことあるよ。」
「………えっ、会ったことあるのか?島田が?なんで?詳しく聞きたいんだけど。」
「東雲……いきなり顔が近いよ。昔ね……遊んでる時に、少し知り合っただけ。ふふふ、後はナイショだから、教えない。」
「昔って……いつのことだよ。」
「東雲には教えたくない。聞いても関係ないでしょ。大好きな筋肉と話してればいいじゃん。」
「は?意味わかんねー。教えろよ。島田っ、頼むから……頼むからさ。」
「嫌だ。絶対に言わない。」
飲食店のバイトをしているので、香水は縁遠い。興味もなかったジャンルだ。
東雲がめちゃくちゃ食いついてきたけど、教えなかった。全てを話してしまうと、夢じゃなくなる気がしたからだ。
葵君には、ちょっと掻い摘んで話をした。僕の過去を知っているだけに心配されたけど、昔の話だからと説明すると納得してくれた。
今はもう同じことをするつもりは無いんだよ、と伝えると安心したように笑う。
それから、授業をサボってスマートフォンを駆使し、雅さんの情報を集めた。
香水のモデルは片仮名表記の「ミヤビ」で、僕が知っているのは「雅さん」だ。
ミヤビは謎多き人物みたいだった。プロフィール等は一切明かされていない。
心の底にしまってあった温かなピンク色の思い出が、止めどなく溢れ出してきた。確か、SMについて詳しくて、大人の玩具を使うのにプロだって言っていたよね。それらしき情報を名前と一緒に検索すると出てきた。
やっぱり、裏の世界の女王様だったんだ。
「緊縛モデルって何だろ……」
僕が呟くと、隣にいた葵君が覗いてきた。一緒にサボってくれた葵君に感謝しながら、2人で画面を眺める。
「緊縛モデル?何それ。縛るの?うわ、これが雅さん。凄いね。吊るされてるけど、辛くないのかな。痛そう。身体が柔らかいからできる姿勢だよね。」
そこには身体を上体に反らした雅さんが、紐で縛られ、更に吊るされていた。
「痛くないみたいだよ。こういうのは
プロがやるんだって。綺麗だなぁ……」
「別世界の話だよな。島田の言う夢の世界みたいな感じに思える。」
暫くすると、とあるブログに辿り着いた。
内容を読むと、どうやら雅さんの追っ掛けをしているサラリーマンのブログのようだ。
各地で開催されるイベントへは隈なく出掛けいつも1番前に座るらしい。感想や意気込みもこと細かく記しており、時々写真も載せていた。ハンドルネームは『轟』さんで、文面からは若くないように感じる。
だけど、雅さんへの愛はひしひしと伝わってきた。フェチってこんな所にもある。
「あっ、ここに書いてある。明後日にイベントをやるんだって。ワンドリンク付きで、当日券もありますって。この人も行くみたい。島田……行ってみる?雅さんに会いたいんだろ?勿論、俺も同伴するけど。」
「ええっ……一緒に行ってくれるの?」
「心配だから島田を1人では行かせられない。俺だってその……親友だし……頼りにしてくれたっていいんだよ。」
これって、葵君が僕にデレたのかな。
嬉しくなって親友の手を握ると、赤い顔をして拒否された。
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