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「じゃあ、今日はこれで終わりだ。気を付けて帰るように」
HRが終わってみんなそれぞれ帰り支度をする。
やっと終わった。
俺も帰ろ…
「ねぇ、未月」
鞄を持って席を立った時、声をかけられて。
顔を向けたら、朝俺に冷たく当たってきたΩ性の林と岸田がいた。
なんだろと思っていると、持っていたホウキを投げ渡される。
慌ててそれを掴んだ。
「な、何…」
「掃除代わってくんない?」
掃除って、先週も頼まれたのに。
他のΩにだけど…
「俺、今週掃除当番じゃな「ひどーい!」」
えっ…
いきなり大きい声を出してまだ教室に残っていた生徒と担任の木崎先生がこっちを見てくる。
「何かあったのか?」
「あ、先生!聞いて下さいっ」
近付いてきた先生に二人が駆け寄る。
あー、最悪の展開…
「未月くんが教室掃除代わってくれないんです。僕たち発情期前で具合い悪いのに…」
そう言って怠そうに体を支え合う二人。
「いつでも健康体のβには分かんないよね」
冷たい視線と一緒に投げられた言葉。
βの先生も複雑そうに表情を歪めた。
ごめん…
木崎先生まで巻き添え食らわせてしまった。
「…だけど未月はこの前もして「だ、大丈夫です!俺してから帰りますっ」」
かばってくれた木崎先生の言葉を遮って答える。
きっとここで先生が俺の方をもったら先生まで標的になってしまう。
それだけは避けたい。
「最初からそう言いなよね!バーカ」
「っ…」
ドンッとわざと俺の肩にぶつかって二人は教室を出て行った。
同時に周りの視線もなくなる。
「いいのか?未月」
「はい。大丈夫です」
「悪い…。助けられなくて」
頭を下げる先生に俺は首を横に振った。
「先生が謝ることないです。それに、俺慣れてますから」
βには拒否する権利ないんだから、仕方ないよな…
「未月、災難だったな!」
教室の床を掃いてたら同じクラスの山本がやって来た。
雑巾を手にして。
「あはは…」
きっとさっきの光景を見ていたのかそう言われた。
「今月入ってずっと掃除当番じゃん、お前。夏休みまで続いちゃうんじゃね?」
「それは勘弁してほしい!」
やっと夏休み入るのに。
「まぁ、Ωとは寮別だから大丈夫だろ」
あー、そうだった…
でも一番の問題は、
「αと一緒の方が嫌だ…!」
ホウキを握りしめながら肩を落とす。
Ωと違ってアイツらは容赦ない。
寮じゃ毎日パシリだし。
夏休み入ったら即家帰ろ!
「αなぁ…。アイツらβのことΩより下に見てるからな」
「…性が違うだけでなんでなんだよ。同じ人間じゃん!」
ちょっと頭が良くて顔がいいだけでこんな差別されるなんて間違ってる。
αもβもΩも、平等に生きる権利があるはずなのに。
「仕方ねーよ。それが俺たちの運命なんだからさ」
「そんな運命受け入れてたまるか!」
「でも結局今日も掃除してんじゃん」
うっ…
山本に言われて言葉が詰まる。
「…はぁ、いつまで続くんだろ」
またがっくりと肩が落ちる。
ほんと、目の前にすると何も言えない自分が嫌になる。
「はは、一生じゃね?社会出たらもっと酷いかもよ」
いや、笑い事じゃねーよ!
お前もβなのになんで笑ってられるんだ!
「絶対無理!そんなのっ」
叫ぶ俺に山本はまだ笑っていた。
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