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空腹の四限を乗り切って(菓子パンは十分休みに食ったけど)待ちに待った昼休み。
「悠季くん、ご飯食べよー」
「うん」
いつも通りに緋結が窓際の一番後ろにある俺の席にやってきて、不在中の前の席に座る。
今日も伊咲先輩の話題になるだろうと言う覚悟を持って変な緊張感の中、食堂で詰めてもらった弁当を机に広げた。
(聞く分にはいいんだよ。ただ、やっぱ昨日の事がなぁ……)
頭にチラついてしまうそれのせいで何も集中出来なくなる。
「わぁ、今日ハンバーグだよ! 悠季くん好きだから良かったね」
「あ、そ、そうだなっ」
緋結に話しかけられただけで吃ってしまって、もうただの挙動不審な人。このままじゃ逆に怪しまれてしまうっ。
「いただきまっ……!」
食べてやり過ごそうと思ったら今度は舌を噛んでしまう悲劇。マジで痛い。
「大丈夫!? 悠季くんっ」
口元を手で抑えて俯く俺に緋結が心配そうに聞いてくる。
「っ、へ、平気……」
なんとか笑って見せるけど、口内に広がる血の味に一番思い出したくない記憶が蘇ってくる。
(もう、二重苦だ……!)
結局、大好きなハンバーグは血の味と舌に広がる痛みで終わった。
「ちょっとトイレ行ってくるね」
散々だった昼食を食べ終わって、緋結が席を立つ。俺はどこか解放された様な感覚に一安心する。
てか、眞尋先輩の話聞かされるだろうなって思ってたけど一回もその話題にならなかった。寧ろ朝からどこか遠慮しているような……。いや、別にいいんだけど! 話聞いたら絶対思い出しちゃうし。
「あれ、緋結いないの?」
え?
声のした方を見上げると、知らない生徒がいた。なんか、どこかで見た気も……。
「緋結ならトイレ行ってるけど」
「そう。じゃあ、また放課後来ようかな」
そう呟いて俺を見てくる。
(な、なんだろ)
「君、もしかして悠季くん?」
そう聞かれて頷く。なんか、嫌な予感……。
「やっぱり。緋結から聞いてるよ、君の事」
そう言って優しい笑顔を浮かべるその人に、俺は恐る恐る聞いた。
「……えっと、誰?」
「あぁ、まだ名乗ってなかったね。伊咲眞尋(いさき まひろ)だよ」
「!?」
やっぱり!!
目の前の伊咲先輩は緋結が座っていた前の席に座る。
昨日は薄暗くてよく見えなかったけど、カッコいい。マジで、男でも惚れちゃいそうなくらい。緋結より濃いめのブラウンの髪に優しい笑顔はおとぎ話に出てくる王子様みたいで。
(同じカッコいいでもアイツとは全っ然違うな! 断然伊咲先輩の方がいいっ)
「緋結がね、いつも嬉しそうに話すんだよ。悠季くんって仲のいい友達ができたって」
「そ、うなんですか……」
確か先輩だった事を思い出して敬語に直す。頭の中は昨日の事を思い出しそうで泣きそう。
「でも、昨日見ちゃったんだよね?」
(見ちゃった? 昨日……?)
その言葉に顔を上げると、申し訳なさそうに伊咲先輩が謝る。
「ごめんね。ちゃんと鍵閉めてれば良かったんだけど、忘れてて」
これって明らか昨日の! てか、なんで俺が見たの知って……。
「あ、ああのっ、俺見たくて見たんじゃないんで! 決して覗きとかじゃ……!」
焦ったせいでまた吃ってしまった。でもこれだけは言っておかないと!
「分かってるよ。君の慌てた声が聞こえてきたから」
ガーン……。やっぱ声聞こえてたんだ。
てことは、
「緋結も俺が見たの……」
「うん。知ってる」
その言葉に本当にごめんなさいと机に頭をぶつ勢いで謝った。事故とは言え、見てしまった罪悪感がまた襲ってくる。
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