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菜由はどこか緊張した面持ちで俺を見てくる。
(お、落ち着け!)
焦りがバレないように、深呼吸して俺はできるだけ冷静に口を開いた。
「な、んでそんな事聞くんだよ?」
あぁ、ダメだ。完璧声が裏返ってしまった!
「その、昨日食堂から帰る時……」
そんな俺を知ってか知らずか、申し訳なさそうに菜由は話始める。
「何か言い合ってる声が聞こえてきて、壁から覗いたら……その、未月くんと流木先輩が、キスしてたから」
(………最悪だ)
なんてタイミングの悪い時にっ。もう冷や汗が止まらなくて、今すぐ逃げ出したかった。
でもこれだけは確認したくて恐る恐る口を開く。
「そ、それって、誰かに……」
「あ、話してないよ! 未月くんに聞いてみようと思ってて」
良かった! それだけでも救い。
「誰にも言わないで! お願いっ」
椅子から立ち上がって懇願する。こんな事広まったら俺はもう、色々終わる。
「う、うん。未月くんがそう言うなら誰にも言わないよ!」
その言葉に安堵して俺は席に座り直す。
「……ありがとう」
一安心だけど気分はドン底。見られていたと言う事実が深く突き刺さる。
(昨日、追いかけなければよかった。緋結と伊咲先輩と食堂行ってればこんな事には……)
もう後悔しても遅いんだけどさ。
「そんな、構わないけど……。流木先輩とは付き合ってないの?」
「断じてない! それはない!」
俺とアイツが、なんて考えただけで虫酸が走る!
「じゃあ、なんでキス……」
「あ、あれは、なんと言うか……」
何て誤魔化せばいいんだ!
頭の中で試行錯誤するけどいい理由が見つからない。ぐるぐると考える俺に菜由がぽつりと呟く。
「……でも、羨ましいな」
「え?」
今羨ましいって言った? どこが!?
「流木先輩ってモテるのに特定の子作らないって噂だから」
「……へ、へぇ」
あんな奴のどこにモテ要素があるのか全く分からない。
ちょっと顔がいい位で中身なんか最悪の最低ヤローじゃん! 冷たいし、俺様だし!
「それに、伊咲先輩と二人で王子って呼ばれてるんだよ」
王子!? 魔王の間違いじゃ……。伊咲先輩は分かるけど。カッコいいもん。
「緋結ちゃんと付き合ってからファンの子は減ったけど、周りからの嫌がらせはあるみたい」
「嫌がらせ?」
「うん。妬んでる子からの」
あぁー、男同士でもそういうのあるのか。嫉妬ってこわ。
(でも、気付かなかったな。緋結が嫌がらせ受けてるなんて)
菜由が知ってるって事は多分相談受けてたんだろうな。そこに寂しさを覚えてしまうけど俺、付き合ってること自体知らなかったから仕方ないよな……。
「だから今流木先輩狙ってる子多いんだよ。フリーだし尚更」
マジかよ! 絶対アイツよりいい人いるだろっ。みんな見る目おかしいんじゃね? と思ってしまう。
「え、まさかお前も?」
さっき羨ましいって言っていた事を思い出して聞くと、慌てて首を振った。
「違うよ! 俺には将がいるからっ。ただ純粋に、カッコいいなとは思うし流木先輩の事……」
そう否定する言葉に菜由も彼氏持ちだったのを思い出した。
将とはクラス違うけど、昼休みに時々サッカーしたりバスケしたりしてる。一年なのにもうサッカー部のエースなんだよな。話しやすいし、爽やかなイケメンって感じ。
「未月くんも気をつけてね」
「何が?」
「流木先輩のファンの子達からの嫌がらせ」
嫌がらせって! 寧ろその張本人から嫌がらせ受けてるけど!
「大丈夫大丈夫! 俺アイツに嫌われてるし、俺もアイツ大っ嫌いだし!」
「そうなの?」
その言葉に大きく頷く。それにこれから関わり持つ事なんてないだろ。学年違うし、少なくとも俺から近付かなければ。
そんな俺に菜由はまた爆弾を落としてきた。
「じゃあ、下僕ってなに?」
「ブフッ」
ちょっと待って、可愛い顔してなんて言葉を! しかも真顔っ。
「げ、下僕って、え!?」
昨日からずっと検索していた言葉を言われて俺はどう返したらいいかマジで分からなくなる。もはや挙動不審。
「えっと……流木先輩が行った後で下僕になんかなるかって、叫んでたから」
そんな事まで聞かれてたなんて!
(あぁ、やっぱ下僕って、夢じゃないのか……)
「流木先輩と何かあったの? じゃなきゃキスだってしないよね?」
「えーっと……」
ヤバい、もう理由が浮かばない。最初から浮かばないけどさっ。どうしよう……。あぁー、話しちゃっていっか。
菜由、口固そうだもんな。
考えるのも面倒になって、俺は一つ溜め息を吐くと昨日の出来事を話した。
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