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次は保健室寄って、スリッパ返さないとだ。
時間を見るとあと十五分くらいあった。次の授業なんだっけなと考えながら歩いてると保健室から誰か出てきて。
(あれって……)
「あ、柏原」
身長の高さにその名前しか出てこなかった。
(百八十ちょいあるって言ってたっけ)
俺なんて北桜入ってからの身体測定でやっと百六十いったのに。羨まし過ぎる。何を食ったらそんなデカくなれるんだろ。
「悠季? 何してんの」
「昨日足首捻って、スリッパ借りたから返しに来たんだよ」
そう言って持っていたスリッパを見せる。
「捻ったって、大丈夫なん?」
「うん。昨日、千倉先生に処置してもらったから」
「ならいいけどさ。あ、だから昨日バスケ来なかったのかよ?」
バスケ……。あぁ!
その言葉に昨日の昼、柏原たちと約束していたのを思い出した。
「ご、ごめんっ。忘れてた……!」
色々あり過ぎてそれ所じゃなかった以前に、すっかり頭から抜けていた。
手を合わせて謝るとぷっと笑う声がした。
「いいぜ。また足治ったらしよ」
「う、うん。ありがと」
頭をぽんぽんと叩かれて、それから撫でられる。
(同い年なのに、なんか子供扱いされてるような……)
身長差もあるからかな。チラリと柏原を見上げると目が合って、つい逸らしてしまった。
柏原もカッコいい部類に入る。と言うか、実際人気あるって緋結が言ってたっけ。
まぁ、それは俺もわかる気がする。身長高いし、顔もカッコいいし、何より話しやすい。その上入ってるバスケ部では一年なのにエースの座についてる。この前、レギュラーになったって言ってたっけ。
(アイツとは全然ちが……って、なんでその顔が頭に浮かぶんだよっ)
慌てて勝手に脳内に浮かんできた顔に、頭を振って消し去る。
「? どうしたんだよ。嫌? 頭撫でられんの」
「あっ、いや! そうじゃなくてっ……」
って否定するのも変だけど! と思いながらも嫌って言うのも傷つけそうでそう返すと柏原はまた俺の髪をくしゃりと撫でてきた。
「……俺の頭なんか撫でて楽しい?」
大きい手に撫でられるのは気持ちよかったりするから嫌ではないんだけど……。柏原は会うと撫でたり、触ってきたりする。多分、スキンシップが山本とか他の奴らより多いのかもしれない。あ、だから親しみやすいのかも。
(いや、待って。じゃあ、アイツはどうなる……ってだから違う!)
なんでアイツが一々出てくるんだよっ! また頭を振ろうとしてしまうのを何とか堪えた。しかも数々のあの行為的なものも蘇ってきて、顔が熱くなる。
そんな顔を見られたくなくて、俯く俺に柏原は困ったような声を出してきた。
「その顔、ズル……」
「……え?」
何て言ったか聞き取れずに柏原を見上げると、なぜか柏原の顔も少し赤くなっていた。
「あー、もう! 見んなって!」
「えぇ!?」
なんで怒られたの!? 俺っ。
驚く俺に柏原はもたれ掛かるように抱きついてきた。
「か、柏原っ……」
身長差もあるのに、わざとなのか体重も掛けられて体が弓形になってしまう。
「楽しいってか、触りたいって言うか……分かんねぇの?」
「あー、寒いから?」
「……は?」
俺の肩に抱きついたまま聞いてくる柏原にそう聞き返すと、少し間を空けてから返された。
「ほら、ここ山奥だし。六月だけどまだ寒いじゃん。俺、体温高いからよくカイロ代わりにされ……。って、どうしたんだよ?」
途中まで話した所で柏原が深い溜め息と共に俺の肩口に顔を埋めてきた。
「前から思ってたけど、悠季って鈍いよな……」
「どこがだよっ」
「そー言うとことか。てか、なんかいつもと香り違くね?」
「! ちょっ、」
くんくんと首筋や髪の毛を嗅がれて擽ったい。
(ヤバっ、香水……じゃなくてアイツのシャンプーかな!?)
なんて焦るけど、柏原は離れず。そんな時、足音が聞こえてきた。
「あ……」
「うわ、最悪」
その言葉が二重に聞こえてきた。なぜかって、流木を挟んで両隣には林と岸田がいたから。慌てて柏原の肩を押して離れる。
「なんでお前がいんの? しかも柏原くんと」
「俺は保健室に用があって……っ、」
「! あぶなっ」
最後まで言えずに、近付いてきた岸田にすれ違いざまに肩をぶつけられてしまった。よろける俺を支えてくれる柏原。
「邪魔。退いて」
「っ」
今度は林が歩いてきて、思いっきり足を踏まれる。昨日捻ったばっかでダブルの痛みが走る。
「お前らな……!」
「か、柏原っ。俺大丈夫だから!」
二人に対して身を乗り出した柏原の腕を掴んで止める。俺の問題に巻き込んだら、柏原まで被害被るかも知れない。
「鈴汰先輩! 道あきましたよ」
「早くいきましょ」
「…………………………………………」
保健室のドアを開けて、流木を呼ぶ二人。その声は俺に対するものと全然違った。
「っ……」
俺と柏原の前を通り過ぎる時、睨みつけてやろうかと思ったけど顔も見たくなくて逸らした。
だけど、あの香りだけは否が応でも鼻に入ってきてしまって。
(息止めておけばよかった……!)
「ふふ、鈴汰先輩♡」
「早くどっか行けば? ブス。柏原くんもそんな奴と一緒にいない方がいいよ」
流木の腕に抱きつきながら、そう言葉を放ってパタンとドアを閉められた。そしてガチャリと掛かる鍵。
「……何なんだよ、アイツら!」
「はは、ほんとに……」
怒る柏原に乾いた笑いしか出ない。流木と関わってから毎日のように言われる。けど、全然慣れない。
(一々ショック受ける自分も嫌だ……)
溜め息を吐く俺に柏原が口を開く。
「山本から聞いてはいたけど、いつもあんななのかよ? 流木先輩も何も……」
そこまで言って止まる柏原に俺は顔を上げる。
「? どうしたんだよ」
「えっ、あ、いや、圧が怖かったって言うか……」
圧?
理解出来ずにいる俺に、柏原はとんでもない一言を言ってきた。
「やっぱ、流木先輩と付き合ってんの?」
「はぁ!?」
何を言い出すんだ、いきなり! 山本もそんなこと言ってたけどさっ。
「ねぇよ! あるわけないだろ、そんなこと!!」
全力で否定したら保健室からうるさい! と返されてしまった……。もう散々すぎる。
「じゃあ、噂?」
そんな噂が流れてることすら嫌になりながら頷くと、安心したように息を吐かれた。
「良かった。てか、そうだよな。付き合ってたらわざわざ他の奴としねぇよな。セックス」
……はい?
何が良かったのか以前に最後に言われた言葉に俺はもう一度聞き返していた。
「な、なんでせ……!」
俺の口からは最初の一文字しか出なかったけど。
「え、お前知らないの? 保健室、ヤり部屋で有名なんだよ。流木先輩の」
「やり部屋?」
「セックスする時の部屋って意味」
「!?」
とんでも案件だろっ!
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