アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
23
-
「ここでいいよ」
翌朝、母さんが待ってる校門に行こうと部屋を出たらなぜか流木も付いてきて。
寮のエントランスまで来た所でそう言った。
(友達でもないのに一緒にいるとこ見られたくないしな!)
「ん、」
「……ありがと」
流木からここまで持ってくれたカバンを受け取って寮を出ようとした。
変なとこで紳士的な面もあるんだよなぁ……。
(昨日のことを思い返すと有り得ないけど!)
本当に徹夜させられるし(寝たの朝の六時過ぎ)、結局腰やアソコは痛いまま。まぁ、歩けただけ良かったけどさ。
(……それに、唇も痛い)
擦り合わせ、はもちろんずっとしてたけどその間キスもしっぱなしだった。
なんか、もうよくわからないくらい体がおかしかった気がする。
ちらりと流木を見上げるとふいにその時の記憶が蘇ってきて。
『── ちゃんと刻み込んでやるよ。お前の記憶にね』
「〜〜っ!」
一気に顔面に熱が集中して、思いっきり頭を振った。
「……何してんの」
「べ、べべ別にっ」
直視できなくてばっと背中を向けた。
(ぅうっ、心臓がうるさい!)
「悠季」
──むぎゅ。
「!?」
そしたら背中から抱き締められて。俺の肩口に頭を乗せてくる。
え、何してんのコイツ!!
「ちょ、見られたらヤバいって……!」
いくら夏休みで人がいないって言ってもさすがに安心できない。もし、誰かに見られたらまた一気に広まってしまう!
だけど、そんな俺の気持ちとは裏腹にコイツは焦ることなんてなく。
「いつ帰ってくんの」
いつって……。
予想外の質問に少し驚いたけど、俺が帰ってくる間に次の嫌がらせでも考える気だなと勝手に推測した。
「えっと、三十一!」
少しでも会わないためにギリギリまでいよう!
絶対家にいた方が安全だし、色々と。
「………………………………」
そう答えたらなぜか肩に回された腕の力が強くなった。しかも無言。
(え、こわっ)
「……りゅ、流木?」
沈黙も嫌でその腕の中で振り返ると頬を両手で挟まれて……。流木の表情を見る前に、唇が重なった。
「な、なにっ……」
それは触れるだけで離れたけど、顔面は尚更熱くなる。やっぱり、コイツの顔を直視できないまま俺は俯いてしまって。
「じゃあね」
「っ、」
今度は俯いた俺の頭にキスを落としてきた。もはや恥ずかしさしかない。周りの目も含めて! 誰もいないことを祈るけど(確認する余裕もない)……。
「さ、さよならっ」
もうこの場をさっさと離れるしかない!
そう思って走り出そうとしたらグイッと腕を掴まれた。
「う、わっ……」
「約束、忘れんなよ。……下僕」
「!!」
耳元でわざと言ってくる流木を最後に睨みつけて、俺は腕を振り払った。あとはもう校門まで全力疾走。
「は、最悪……!」
『約束、忘れんなよ。……下僕』
なんで俺、あんなこと言ったんだよー! 頼むからマジで忘れて欲しいっ。
それに、俺……、
「下僕じゃねーからな!!」
なんて。
一人、晴れ渡った空に向かって並木道を駆け抜けながら叫んだ。
────────────────────────
──ゲロ甘だわ。
(て言うか、あの子たち付き合ってるのかしら?)
目の前で行われているやり取りにそんな誤解を招いてしまいそうになる。
だって、そうじゃなかったら……。
「流され過ぎよ、未月くん」
心配になるレベルね。これじゃ、本当に……、
「で、アンタは何してんの?」
「……気付いてたの」
死角の壁に寄りかかっていたら、今さっきまで未月くんとの別れを惜しんでいた流木くんがいた。
「覗きかよ」
「勘違いしないでくれる? こんな共同の場所でイチャついてる貴方が悪いのよ。出て行かなかっただけ感謝なさい」
「……るせぇよ」
あら、不機嫌。と言うより、
「寂しいの?」
カツン、と一歩近付いて流木くんの顔を下から覗き込むと益々眉間に皺を寄せた。
まぁ、そうよね。あと半月は会えないもの。さっきの会話だと未月くんは最終日まで戻って来なさそうだし。
「……別に」
って顔じゃないわよ、流木くん。
(面白いわ。本当に)
なんてことは言えないけれど。
「貴方も家に帰ったら? 万が一の可能性で未月くんに会えるかもしれないわよ。ここにいるよりは」
「言われなくてもそうする」
そう言って背を向けて歩き出す流木くん。
(まるで別人ね。家嫌いだから去年は帰らなかったくせに)
「楽しんでらっしゃいな」
未月くんには苦でしかないでしょうけど。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
72 / 236