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約束 2
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二月に入ったとはいえ、まだ厳しい寒さが身に染みる季節。ごう、と唸る北風に凪は身をぶるりと震わせた。
「…寒ぃ~…」
腕に手を回し、身体を温めるように擦る。
この寒さのせいで徒歩10分以内のコンビニまでの道のりが長く感じる。
凪はポケットに手を伸ばしスマートフォンを取り出すと斎から連絡が来ていないか確認する。
何の変鉄もない初期設定の壁紙だけで、連絡の通知も来ていない。それを見て気分が自分でも分かるほど落ち込む。
自分から誘ったくせに、連絡の一つぐらい返せよな。
―――て、何落ち込んでんだよ…!これじゃまんまとアイツのペースじゃねーか。
「はぁ…」
自然に零れた溜め息は、白い息となって空に溶けた。
暫く歩き、コンビニの看板が見えると同時に視界に映り込んできた、見覚えのある高級マンション。
(そういえば、このコンビニ、斎のマンションの目と鼻の先だったな。)
いっそ斎ん家に乗り込んでやろうか。いや、でもセキュリティ半端じゃねーし無理か…
そんなことを思ったのも束の間、マンションから出てくる人影が見えた。
―――こんなとこ、斎以外にどんな人が住んでんだろう?
気になった凪は好奇心でよく見える範囲にまで寄る。
近くに寄ると、はっきりしていく顔や姿。
男の人と女の人が肩を寄せ合って歩いていた。
(どれどれ…どんな金持ちだ…?)
電信柱に隠れた凪は、マンションから出てきた人を見ようとひょこりと顔を出し、覗き込む。
その姿を確認した凪は、愕然とした。
すら、と高い身長に、その辺には居ないような、美しく端正な顔立ち。
そんな奴は、俺の知る限りアイツしか知らない。
「―――斎…」
隣を歩く、綺麗な女性と楽しそうに笑う斎。
凪が見たこともないような優しい笑顔を向けて。
(え……俺と約束してるくせにどうして女の人と会って……)
瞬間、周りの音はまるで消え去り、その代わりに自分の心臓が大きく脈打つ音が頭に響く。
縋る思いで凪は携帯電話を取り出すと、斎に電話を掛ける。
数回のコール音が鳴り、目の前の斎が電話に気づいたようで、女の人から離れると電話に出た。
「もしもし」
「……」
斎のいつもと変わらぬ声が聞こえてくる。
凪は何か話さなくてはと思うものの、口から言葉が出ない。
「凪?」
押し黙る凪を不思議に思ったのか、名前を呼び掛けられ、慌てて口を開く。
「…っ、え、と…その、何時に来るのか聞いとこうと思って、さ」
なるべく平常な声色で凪は斎に聞いた。
バクバクと脈打つ心臓。静かに斎の言葉を待つ。
「…あー…すまない。急用が出来たからまた今度でいいか?」
声色も変えずにそう告げられ、胸の奥がじくじくと痛み出した。
「…っ」
「凪?」
「そ、そうか!…わかった!じゃあまた」
凪は一方的にそう斎に告げると通話を切った。
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