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親友 4
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温かい空気のせいで気づかなかった。
ぽろ、と溢れだして頬を伝う涙に。
凪はハッとして、涙を手で拭う。
「ち、違うぞ…?これは、あれだ。そ、そうお湯…で……」
そう言った瞬間、祐也が湯槽のなかに入ってくると同時にぎゅう、ときつく抱き締められていた。
祐也の冷えた身体が触れ合った部分を冷たくしていく。
回された腕が痛いほどに締められ、祐也の素肌とぴったりくっついている状態だった。
突然のことに頭がついていかない。
「っ……ゆ、ゆう……」
「アイツとなんかあったのか」
びく、と身体が震えた。
祐也の言うアイツ、とは斎のことだろう。
祐也の口から斎が出てきたことに驚くと同時に、その言葉にはまるで付き合っているかのような意味合いも含まれているように思えた。
「…っ、祐也…とりあえず離せ……」
この状況で身体をくっつけ合っているのは、まずいような気がして身体と共に抱き込まれてしまった腕で胸を押す。
「いやだ」
祐也がそう言うと、腕の力は緩むどころか、更にきつく抱き締められて祐也の胸に顔がぴたりとくっついてしまう。
なんでこんな状況に……
「…っ」
だが祐也の心臓の鼓動の音が聞こえてきて凪の抵抗は弱まる。
脈打つ心臓の音が速くて、釣られて自分の鼓動もどくん、どくんと早さを増した。
それと同時に人肌に触れて落ち着いてしまっている自分がいて。
「凪、アイツと付き合ってんだろ…?」
紡ぐように言葉に出されたそれに凪は弱々しく、小さくふるふると頭を振った。
「……付き合って、ない」
これは事実だ。
「…そうか」
祐也の勘は昔から鋭くて嫌になる。だけど自ら話さない限り、深く聞いてこないところが祐也の優しさだった。
そしてそれが今はありがたい。
「受け止めてやるから泣いとけ」
祐也がそんなこと言うもんだからつい笑ってしまう。
だけど感情というものは素直なもので、目から溢れだしてきた涙で視界がぼやける。
「…っ、ふ…ぅ」
ぽんぽんと規則正しく凪の頭を抱き締めては宥める。
その手が気持ちよくて、箍が外れたように涙が次々と溢れだした。
今は少しだけ、祐也の広い胸に抱かれていたくなった。
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