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放っておいて欲しいのに
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祐也が何から何まで世話を焼いてくれたおかげで講義にも間に合い、ふぅ、と一息をつく。
空いてる席に座り一安心すると、突然スマートフォンのバイブレータが震えた。
驚いてびく、と身体が揺れるも、すぐに画面を確認する。
不在着信のマークがロック画面に表示されていて、フリックすると斎からの着信が一件とメールが一件入っていた。
―――今さら何なんだ。もう忘れるって決めたのに、のこのこメールしてきやがって。
削除しようと、削除画面を出したが思い止まり、とりあえず見てみようとメールを開く。
『昨日はすまなかった。今日の夜は空いてるか』
どきん、と胸が高鳴る。いつもどうり淡々としたメールだが、自分が悪いとは思っているのだろう。
その証拠に、いつもは勝手に会う約束をこっちの都合お構いなしで決めていたくせに、今日は空いてるかとちゃんと聞いてきた。
感情とは素直なもので、つい会いたいという気持ちが先走る。
だが、すぐに昨日の二人が頭を過ぎってずきん、と胸が痛んだ。
―――俺のことは遊びとしか思ってないくせに、期待させるようなことして、その気がないのなら放っておいてほしい。
勝手に心のなかに入ってきて掻き回すだけ掻き回して、手のひらで転がされる様が見たいだけなんだろう―――?
そう思うと悲しくなって、じわり、と涙が滲む。
嫌だ、泣きたくない。あんな奴のために泣いてなんかやるもんか。
凪は涙が出ないよう目を見開き、斎から届いたそのメールを削除した。
「凪?」
下を向いていた凪が気になったのか、こそ、と祐也が声をかけてきた。
いつの間にか授業は始まっていて、渡辺の野太い声が響いている。
「あ…、大丈夫。ちょっと眠いだけ」
そう言って少し笑ってみせた。
「まだ眠いのかよ。どんだけ寝るつもりだ、この寝坊助」
「うっせぇ、バカ」
「バカはお前だ、このバカ」
「バカバカ、うっせぇんだよ。このアホ」
「なんだと…!」
「こぅら!そこ!!うるさいぞ静かにしろ!単位やらんからな!!」
突然、渡辺の野太い声が大きく響き、祐也と二人、指をさされ身体がびくぅ、と跳ねる。
みんなの視線がこちらに向けられ、あちらこちらでクスクスと、笑い声が聞こえてきて恥ずかしい。
「「…す…すいません…」」
二人して小さく謝ると渡辺が満足そうにして授業を再開した。
「…お前のせいだからな」
小さく祐也にそう呟くと睨まれた。
だがすぐに祐也は微笑むと凪の頭をくしゃ、と撫でてくる。
「…ようやく元のお前に戻ったな」
どき、と心臓が跳ねる。
祐也がそこまで俺のことを見てくれていたなんて。
それと同時に申し訳ない気持ちになった。
やはり、祐也には心配かけたくない。
凪もにこ、と微笑むと、「ありがとう」と小さく告げた。
◆
一日の講義が終わり、祐也と学校を出ようと歩いていると、ざわざわと在学生達が騒いでいた。
「なんかやけに騒がしいな」
近くに行くと女子の人だかりができていた。それと、その近くに止められた見覚えのある白い高級車。
―――嘘だろ…?まさかアイツなわけ……
凪は思い当たる人物を頭に浮かべたが、それは祐也も同じだったらしい。
すぐに祐也はぐい、と凪の腕を引きそれと反対方向へと歩き出そうとしたその時。
「凪!」
と、綺麗な低い声が名前を呼んだ。
「っ…!」
どくん、と心臓が跳ねる。
立ち止まり、ゆっくりと振り返ると斎の瞳と目が合った。
どくん、どくんと動悸が激しさを増していき、胸の奥から湧き上がる熱情。
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