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軽く、短いキスだった。
「ふ…鶏マヨくせぇ」
はは、と小さく笑う祐也。
「裕也……お前、なにした…」
唇を腕で隠す。何か、罪悪感のようなものを感じたのだ。きっと、あいつに対する、罪悪感。
「何って、キス」
「っ、なんで…、こんなことすんだよ…?俺達、幼馴染だろ……?」
動揺の眼差しで裕也を見つめる。
目の前の裕也はちっとも気にならない様子で、ふわりと微笑むと、大きな手を頭に乗せてきた。そのまま、ぽんぽんと二回軽く撫でられると、急に真剣な顔になった祐也の、茶色い眸が目を射抜く。
「俺、もう我慢しねぇから」
「覚悟しといて」と裕也がにこりと笑って見せた。そして、どこか自信に満ちた、余裕のある表情は、今まで見ていた幼馴染の裕也ではなく、一人の男がそこにいたように思う。
呆然とする凪の頭を、わしゃわしゃと掻いて、ベッドから立ち上がると、玄関が閉まる音がした。
残された俺は、一人、錯雑とした感情で埋め尽くされていた。
あのあと、一睡もできなかった凪は、朝を迎えた。
テーブルには一口しか手をつけていない食べかけの弁当が、そのままにされている。もう、食事どころではなかった。
昨夜、裕也にキスをされた。二回目のキスをしてしまったのだ。
一度なら、気の迷いかも、と割り切れたが、二度目となると疑惑は確信に変わる。ただ、それに気づいてしまったら、二度と元の二人に戻れないような気がして。
仮にも幼馴染だ。何をするにも一緒にいたし、友達であり、兄弟のような存在の裕也を拒絶するのは、想像するだけで胸が痛む。
だから、あのキスの意味が、どうか思い違いでありますようにと願う。
すっかり乾ききった鶏マヨ弁当に蓋をして、ゴミ箱へ捨てたのだった。
壁に掛かった時計がふと目に入り、慌てて大学へ行く準備を始める。正直、祐也に会うのはかなり緊張するし、気まずいのだが、そうも言ってはいられない状況であった。これ以上、単位を落とせないので、気怠い身体を奮い立たせて、大学へ向かったのだった。
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