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凪の抵抗も虚しく、祐也からの甘いキスに翻弄される。
相手は、幼馴染で、友達同士。
そんな相手でも、身体は構わず、じわりと熱を帯びていく。頭では分かっている。抵抗しないと。そう、思っているのに。与えられるキスに、身体が蕩けていく。
斎とは違う、優しくて思いやりのあるキスだった。
実にゆっくりと、唇が離された。
「…凪、好きだよ」
恋情の好きなのか、それとも友情の好きなのか、聞くまでもなかった。先のキスが物語っていたからだ。自分の好きとは異なると、伝えなくてはならない。
「…祐、也……おれ」
そういう意味の好きで言ったのではない。そう言いかけたとき。
「俺、思えば昔から、凪のこと好きだったのかもな」
祐也は凪の髪を優しく撫でながら、愛おしそうに見つめる。
「小さい頃から泣き虫で、人見知りで、人に誤解される凪が、いつも俺の後ろに隠れててさ。そんな凪のこと、ずっと守らなきゃって思ってた。だから高校も大学も同じとこ受験して、凪の傍にいようって。多分、ずっと凪のこと好きだった」
祐也は、憂愁を帯びた表情で、続ける。
「凪に向ける想いが、恋だって気づきたくなくて、女の子とたくさん遊んだりした。今思うと、良いなって思う子はみんなどこか凪に似ていた気がする。だけど当然、凪じゃないから、いつもどこか満たされなくて、やっぱり思い浮かぶのは凪の事ばかりだった」
「自覚してからは嫌な感情ばっか溢れてきて、凪の笑顔を独り占めしたい、俺だけの凪でいてほしい、凪に触れたい、俺がまだ知らない表情の凪を見たいって、欲張りになったんだ。だけど、凪が俺に向ける笑顔を壊したくなくて、気持ちを隠した。俺がこの気持ちを隠していれば、何もかも上手くいくって」
「それなのに、凪は俺からどんどん離れて、遠いところに行ってしまった。純粋に、あの男が羨ましかった。俺が知ることの出来ない凪を、あいつはたくさん知っている。そう思ったら気が気じゃなくて、嫉妬でおかしくなりそうだった」
乾いた笑みを浮かべる祐也に、胸が痛んだ。
「どうせ、凪が俺から離れていくのなら、幼馴染っていう関係を終わりにしてでも、凪にこの気持ちを伝えようって。そう、思った。だから、好きか嫌いかって聞いたときに、嫌いって言われたら凪のこと諦めて、潔く玉砕しようって」
「…祐也……」
意味が違う、そう伝えたいのだが、言葉が出ない。
伝えるときっと、祐也は俺の元から離れていく。
狡いことはわかってる。
だけど。祐也と、離れたくない。
そもそも、選べるわけが無い。ずっと傍で守ってくれた祐也、そして恋をしてしまった斎。どちらも大事で、どちらか一人を選ぶ事なんて、できない。
じわりと涙が滲む。
胸が痛い。祐也の純粋な眸が、余計に胸を苦しくさせる。
涙を流す凪の目元を、祐也が指で拭う。
「さっき凪が俺のこと、好きって言ってくれたでしょ?」
「俺、すげぇ嬉しかったんだ」
屈託のない笑顔を向ける祐也。
結局、言い出せなかった。
どちらも選ぶことが出来なかった。
狡い自分に、嫌気が差した。
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