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#22
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「僕にとってはただのエネルギー摂取ですので
そんなに気にしないでください」
「気にするわ!
胡蝶がどれほど酷い扱いを受けてきたか考えると
無性に腹がたつねん
ああ、胸糞悪!」
「すみません、僕のせいで…」
「違う、胡蝶のせいやない
俺は胡蝶をぞんざいに扱ったやつに
腹を立てとんねん
胡蝶が悪くないのに謝る必要あらへん!」
もしかして、僕のために怒ってくれている…?
「…ありがとう、ございます
僕のために怒ってくれたのは
…ハヤトが、初めて」
嬉しい。
僕のために、感情を動かしてくれることが。
だってそれは、僕に向けられたものだから。
僕だけのものだから。
「……っ、!
ち、ちゃんと笑えるんやないか!」
「え…?」
「今の顔や!
その笑顔、ほんに嬉しそうやった
…今の気持ち、忘れんなよ」
「僕、今…
笑いましたか?」
「ああ、笑ったで
…とびきりべっぴんに、な」
「え?」
「あ、っいや、なんでもない!」
「そうですか
笑えましたか、僕は」
ようやく、ハヤトが納得するような笑顔を
作ることができ…
…作る?
今の笑顔は、作っていた?
いや、自分でも笑ったなんて気がつかなかった。
じゃあ、本当に自然に______…
「…この目が」
「え?なんやて?」
「この目が…
片方でも、見えたらよかったのに」
僕は、僕が笑った顔を
もう忘れてしまった。
兄様の冷たい笑顔は覚えていて
無邪気な笑顔を覚えていないように
僕の記憶から僕の無邪気な笑顔も
消してしまった。
きっと目が見えたなら
今、取り戻せたかもしれない。
自分の今の姿を、捉えることができたかもしれない。
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